コラム
不動産 13 商人同士の不動産売買では瑕疵担保期間は短い
2011年9月16日 公開 / 2012年8月17日更新
1引渡を受けたときは6箇月以内に調査・通知をしないと瑕疵担保に関する権利はなくなる
商法526条1項は「商人間の売買において、買主は、その売買の目的物を受領したときは、遅滞なく、その物を検査しなければならない。」、
2項で「前項に規定する場合において、買主は、同項の規定による検査により売買の目的物に瑕疵があること・・・を発見したときは、直ちに売主に対してその旨の通知を発しなければ、その瑕疵・・を理由として契約の解除又は代金減額若しくは損害賠償の請求をすることができない。売買の目的物に直ちに発見することのできない瑕疵がある場合において、買主が6箇月以内にその瑕疵を発見したときも、同様とする。」
と「買主による検査と瑕疵発見の通知義務」を定めていますので、
商人から商人が、不動産を買い受けたときは、引渡を受けた後6箇月を経過すると、売主に対し、瑕疵担保責任を追求することができなくなります。
ただし、3項で、「前項の規定は、売主がその瑕疵・・につき悪意であった場合には、適用しない。」と規定されていますので、売主が、瑕疵のあることを知っていた場合は、例外です。
2土壌汚染のある土地を購入した場合の事例
東京地裁平成18.9.5判決の事件は、土壌汚染のある土地を購入した場合の例です。
この件で問題になった土地は、機械等の解体業者に賃貸していた土地ですが、買主はこれを購入し、その引渡しを受けた後6箇月以上経過して土地の土壌汚染調査を行い、地中から、環境庁告示にかかる環境基準、環境省運用基準及び土壌汚染対策法の定める各基準値を上回る鉛及びふっ素が検出されたので、そのことを売主に通知をしたのですが、
判決は、
①土壌汚染は土地上に一見明らかな形で存在していることは少なく、目視等の通常の検査では発見することが困難であるといえるから、同条にいう直ちに発見することが困難な瑕疵に該当し、引渡し後、六か月が経過した後には、買主は、売主に対して瑕疵担保責任に基づく請求をすることができないものと解される。
② 同条項は、その文言上、土地についての瑕疵を除外していないし、商取引における迅速性の確保という同条項の趣旨は、土地等不動産の取引にも当てはまるものである。
③ したがって、本件土地の土壌汚染についての瑕疵担保責任の主張にも同条項の適用があり、特段の事情がない限り、引渡し後六か月の経過によって買主は同責任に基づく主張をなしえない。
と判示しました。
関連するコラム
- 不動産 中間省略登記ができない理由 2014-02-09
- 不動産 マンション外壁のタイルが剥離したときの責任問題 2014-01-29
- 不動産 オフィスビルの場合は,通常損耗の原状回復義務があるのか? 2014-07-16
- 不動産 農地を買って仮登記している場合の権利と時効 2014-03-12
- 不動産 公図の歴史 2014-03-02
コラムのテーマ一覧
- 時々のメモ
- コーポレートガバナンス改革
- 企業法務の勘所
- 宅建業法
- 法令満作
- コラム50選
- コロナ禍と企業法務
- 菊池捷男のガバナー日記
- 令和時代の相続法
- 改正相続法の解説
- 相続(その他篇)
- 相続(遺言篇)
- 相続(相続税篇)
- 相続(相続放棄篇)
- 相続(遺産分割篇)
- 相続(遺留分篇)
- 会社法講義
- イラストによる相続法
- 菊池と後藤の会社法
- 会社関係法
- 相続判例法理
- 事業の承継
- 不動産法(売買編まとめ)
- 不動産法(賃貸借編)
- マンション
- 債権法改正と契約実務
- 諺にして学ぶ法
- その他
- 遺言執行者の権限の明確化
- 公用文用語
- 法令用語
- 危機管理
- 大切にしたいもの
- 歴史と偉人と言葉
- 契約書
- 民法雑学
- 民法と税法
- 商取引
- 地方行政
- 建築
- 労働
- 離婚
- 著作権
- 不動産
- 交通事故
- 相続相談
カテゴリから記事を探す
菊池捷男プロへの
お問い合わせ
マイベストプロを見た
と言うとスムーズです
勧誘を目的とした営業行為の上記電話番号によるお問合せはお断りしております。