法令用語 「ないし」や「乃至」は使わず,「から・・・まで」を使う。
1 速さの順位
この3つの言葉の意味は、いずれも「すぐに」という意味ですが、その速さに違いがあります。もっとも時間的即時性が強い言葉は「直ちに」です。次に速さを求められる言葉は「速やかに」です。時間的即時性が最も弱いのが「遅滞なく」です。
2 直ちに
この意味は「即時に」という意味です。いかなる理由をもってしても遅らせてはならないという響きのある言葉です。
憲法34条前段は「何人も、理由を直ちに告げられ、且つ、直ちに弁護人に依頼する権利を与へられなければ、抑留又は拘禁されない。」と規定していますが、ことの重要性が分かる規定です。
3 速やかに
この意味は「できるだけはやく」という意味です。
法令でこの言葉が使われるときは、訓示的な意味で使われる場合が多い、とされています。
つまり、「速やかでなかったとしても制裁を受けない」ことが多いのですが、銃砲刀剣類所持等取締法23条は「銃砲又は刀剣類を発見し、又は拾得した者は、すみやかにその旨をもよりの警察署に届け出なければならない。」と規定し、これに違反した者は同法35条2号により20万円以下の罰金に処せられることになっていますので、この場合は、「速やかに」は訓示的規定ではないことになります。
なお、同法の別の条文で、登録を受けた刀剣を譲り受けるなどした者は、「速やかに教育委員会に届出しなければならない。」という規定があったとき、登録を受けた日本刀一振りを取得しながら7ヶ月以上も届出しなかった被告人が起訴された事件で、1審の裁判所は、「速やかに」という言葉はその内容が不明確であり罪刑法定主義に違反するとして無効、したがって被告人を無罪としたことがありました。しかし、この件は、控訴審では、罪刑法定主義に違反しないとして被告人を有罪としましたが。
なお、この条文は、現在は「速やかに」を「20日以内に」に改正されています(同法17条)。
4 遅滞なく
この意味は「合理的理由があればその遅れは許される程度の速さ」を意味します。
民法853条1項は「後見人は、遅滞なく被後見人の財産の調査に着手し・・・」と規定していますが、この意味になります。