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間違えやすい法令用語5 印・印影・印章・印鑑

2011年6月6日 公開 / 2012年8月17日更新

テーマ:法令用語

コラムカテゴリ:法律関連

1 印
印とは、法令上は「印顆」(いんか:印形つまり「はんこ」のこと)を意味する用語です。
例①:民法970条に「遺言者が、その証書に署名し、印を押すこと。」という規定がありますが、ここでいう「印を押す」ということは「印顆つまりはんこを押す」ということです。
例②:法人税法151条に「法人の提出する法人税申告書等・・・が自署し、自己の印を押さなければならない。」という規定の「印を押さなければならない。」も、印顆を押さなければならない、という意味になります。

2 印影
 印影とは、印顆を押して表された「影蹟」のことを意味します。要は、朱肉を用いてはんこを押したときに、紙の上に残った跡のことです。
例③:民事訴訟法229条1項で「文書の成立の真否は、筆跡又は印影の対照によっても、証明することができる。」との規定の「印影」がそうです。法令上は、「筆跡又は印影」というように、筆跡と対になって用いられています。

3 印章
 印章という言葉は、広辞苑によりますと「印。判。はんこ」と書いていますので、日常用語としては「印顆」のことですが、法令上は、印顆を表す意味で使われる場合と、印顆と影蹟の双方を表す言葉として使われる場合があります。
後者の例として
例④:刑法165条1項は「行使の目的で、公務所又は公務員の印章又は署名を偽造した者は、3月以上5年以下の懲役に処する。」と規定していますが、ここでいう「印章」は、印顆と影蹟の双方を含むとするのが判例です。はんこを偽造した場合も、印影を偽造した場合も犯罪になるのです。

4 印鑑
日常用語としての「印鑑」は印顆つまり「はんこ」を意味しますが、法令上は違います。法令上は、印鑑は、印顆を用いて紙などに押した「印影」のことをいいますが、法令上にこの言葉が使われるのは、印影の対象用として、官公庁などに、あらかじめ届け出ておく印影の意味に使われます。
例⑤:商業登記法20条1項は「登記の申請書に押印すべき者は、あらかじめ、その印鑑を登記所に提出しなければならない。」と規定していますが、ここでいう「印鑑」がその印影、つまり、この場合は、登記所に対照用に届出る「印影」を意味するのです。

この記事を書いたプロ

菊池捷男

法律相談で悩み解決に導くプロ

菊池捷男(弁護士法人菊池綜合法律事務所)

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