コラム
行政 31 通達は取消訴訟の対象にはならない
2011年4月12日 公開 / 2016年3月15日更新
1 通達による解釈の変更
墓地、埋葬等に関する法律(略称「墓埋法」)13条は「墓地、納骨堂又は火葬場の管理者は、埋葬、埋蔵、収蔵又は火葬の求めを受けたときは、正当の理由がなければこれを拒んではならない。」と規定しています。この解釈については、当初、厚生省(公衆衛生局環境衛生部長)は昭和24.8.22付東京都衛生局長あて回答で「異宗派の埋葬を拒否することは正当事由に該当するので、違法ではない」旨の解釈指針を明らかにしていたのですが、昭和35.2.15付け厚生省公衆衛生局環境衛生部長から都道府県指定都市衛生主管部局長にあてた通達でこれを変更し、異宗派であることを理由に埋葬を拒否してはならないという内容に変えました。
2 その取消訴訟の提起
墓埋法21条は、墓埋法13条に違反したものは1000円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する、と定めていますので、通達の変更により、墓埋法13条の解釈が変更になると、それまでは適法であった異宗派の埋葬の拒否が、あるときから突然罰則の適用を受けること(犯罪)になってしまします。
そこで、某寺院が、この通達の取消訴訟を起こしたのです。
3 最高裁昭和43.12.24判決
同判決は、「通達は、原則として、法規の性質をもつものではなく、上級行政機関が関係下級行政機関および職員に対してその職務権限の行使を指揮し、職務に関して命令するために発するものであり、・・・行政組織内部における命令にすぎないから、・・一般の国民は直接これに拘束されるものではなく・・・また、裁判所がこれらの通達に拘束されることのないことはもちろん・・・また、墓地、埋葬等に関する法律21条違反の有無に関しても、裁判所は本件通達における法律解釈等に拘束されるものではないのみならず、同法13条にいわゆる正当の理由の判断にあたつては、本件通達に示されている事情以外の事情をも考慮すべきものと解せられるから、本件通達が発せられたからといつて直ちに上告人において刑罰を科せられるおそれがあるともいえず、さらにまた、原審において上告人の主張するような損害、不利益は、原判示のように、直接本件通達によつて被つたものということもできない。本件通達中所論の趣旨部分の取消を求める本件訴は許されないものとして却下すべきものである。
と判事しました。
関連するコラム
- 自治体のする契約 2 私法上の契約と公法上の契約 2013-09-11
- 行政 2 たかが勧告と言うなかれ(行政指導でも取消訴訟の対象になる場合) 2010-09-30
- 地方行政 臨時職員と労働契約法18条による無期転換請求権 2015-05-28
- 地方行政 4 行政財産の目的外使用許可から賃貸借契約締結へ 2013-03-09
- 地方自治 概算払と前金払の違い 2015-03-13
コラムのテーマ一覧
- 時々のメモ
- コーポレートガバナンス改革
- 企業法務の勘所
- 宅建業法
- 法令満作
- コラム50選
- コロナ禍と企業法務
- 菊池捷男のガバナー日記
- 令和時代の相続法
- 改正相続法の解説
- 相続(その他篇)
- 相続(遺言篇)
- 相続(相続税篇)
- 相続(相続放棄篇)
- 相続(遺産分割篇)
- 相続(遺留分篇)
- 会社法講義
- イラストによる相続法
- 菊池と後藤の会社法
- 会社関係法
- 相続判例法理
- 事業の承継
- 不動産法(売買編まとめ)
- 不動産法(賃貸借編)
- マンション
- 債権法改正と契約実務
- 諺にして学ぶ法
- その他
- 遺言執行者の権限の明確化
- 公用文用語
- 法令用語
- 危機管理
- 大切にしたいもの
- 歴史と偉人と言葉
- 契約書
- 民法雑学
- 民法と税法
- 商取引
- 地方行政
- 建築
- 労働
- 離婚
- 著作権
- 不動産
- 交通事故
- 相続相談
カテゴリから記事を探す
菊池捷男プロへの
お問い合わせ
マイベストプロを見た
と言うとスムーズです
勧誘を目的とした営業行為の上記電話番号によるお問合せはお断りしております。