自治体のする契約 2 私法上の契約と公法上の契約
1 いわゆる2項道路
建築基準法でいう「道路」とは、一定の要件(最低幅員4m他)を備えた、同法42条1項各号のものを指しますが、この要件を満たさない道路であっても、同法42条2項の「この章の規定が適用されるに至つた(注:具体的には建築基準法施行日である昭和25.11.23)際現に建築物が立ち並んでいる幅員4m未満の道で、特定行政庁の指定したもの」は、建築基準法上の「道路」と看做されることになっています。
2 2項道路に指定される効果
私人の敷地が2項道路に指定されますと、本来の幅員4m未満の道路の中心線から水平距離2mの線を道路の境界とみなされますので、敷地に建築制限等が生じます。
3 2項道路指定の2つの方法
⑴ 個別指定の方法 個別具体的に対象となる道を2項道路に指定すること
⑵ 一括指定の方法 告示等をもって、一定の条件に合致する道について一律に2項道路に指定する方法
4 一括指定も、そのことから直ちに法律効果が生ずるので、抗告訴訟の対象になる
最高裁平成14.1.17判決事案は、N県がN県告示第により,「都市計画区域内において建築基準法施行の際現に建築物が立ち並んでいる幅員4m未満1.8m以上の道」を2項道路に指定した事案です。
原審は、この告示は,包括的に一括して幅員4m未満1.8m以上の道を2項道路とすると定めたにとどまり,本件通路部分等特定の土地について個別具体的にこれを指定するものではなく,不特定多数の者に対して一般的抽象的な基準を定立するものにすぎないのであって,これによって直ちに建築制限等の私権制限が生じるものでないから,抗告訴訟の対象となる行政処分に当たらないとし,訴えを不適法なものとして却下しましたが、最高裁は、
①建築基準法42条2項は,同条1項各号の道路に該当しない道であっても,法第3章の規定が適用されるに至った時点において,現に建築物が立ち並んでいる幅員4m未満の道で,特定行政庁の指定したものは,同項の道路とみなし,その中心線から水平距離2mの線を道路の境界とみなすものとしている。
②同条2項の特定行政庁の指定は,同項の要件を満たしている道について,個別具体的に対象となる道を2項道路に指定するいわゆる個別指定の方法でされることがある一方で,本件告示のように,一定の条件に合致する道について一律に2項道路に指定するいわゆる一括指定の方法でされることがある。
③本件告示は,幅員4m未満1.8m以上の道を一括して2項道路として指定するものであるが,これによって,法第3章の規定が適用されるに至った時点において現に建築物が立ち並んでいる幅員4m未満の道のうち,本件告示の定める幅員1.8m以上の条件に合致するものすべてについて2項道路としての指定がされたこととなり,当該道につき指定の効果が生じるものと解される。・・・
④ そう解する以上,このような指定の効果が及ぶ個々の道は2項道路とされ,その敷地所有者は当該道路につき道路内の建築等が制限され(法44条),私道の変更又は廃止が制限される(法45条)等の具体的な私権の制限を受けることになるのである。そうすると,特定行政庁による2項道路の指定は,それが一括指定の方法でされた場合であっても,個別の土地についてその本来的な効果として具体的な私権制限を発生させるものであり,個人の権利義務に対して直接影響を与えるものということができる。
⑤したがって,本件告示のような一括指定の方法による2項道路の指定も,抗告訴訟の対象となる行政処分に当たると解すべきである。
と判示しました。