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相続 84 遺言による遺産分割の禁止(遺言事項4)

菊池捷男

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1 遺言で、最大5年間は、遺産分割を禁止することができる
民法908条後段は「被相続人は、遺言で、・・・相続開始の時から5年を超えない期間を定めて、遺産の分割を禁ずることができる。」と規定していますので、被相続人は、遺言で、遺産分割の禁止を定めることができます。
遺産分割の禁止は、この他、家庭裁判所が、審判で、遺産分割を禁止する場合もあります(コラム「相続83」参照)が、この場合は、「特別の事由」が必要です。
被相続人が遺言で遺産分割を禁止する場合は、特に理由は要りません。

2 遺産分割を禁止するケース
 遺産分割の協議は、相続人間で利害の対立が生じやすく、結構労の多い仕事になりますが、相続人の中に、①学業に専念する必要のある者、②親権者又は特別代理人に遺産分割協議の意思決定をさせるのが相応しくない未成年者、③遠隔地に住んでいるため、遺産分割協議に参加できない者、④余命長くない者等がいる場合、一定期間、遺産分割を禁止する必要がある場合もあるでしょう。
①のケースでは、相続人は学業に専念できる。
②のケースでは、未成年者が成年に達した後で、自らの意思で遺産分割の協議に参加できる。
③のケースでは、遠隔地での生活や仕事に専念できる。
④のケースでは、死ぬまで遺産分割協議に煩わされないだけでなく、遺産分割の結果のリスク(住居が他の相続人の財産になり、そこから退去を求められる等)を回避できる。

3 遺産分割を禁止する範囲
全相続財産を遺産分割の禁止の対象にすることは無論可能ですが、特定の相続財産についてのみ遺産分割を禁止するのも可能です。
相続人の1人が被相続人が自宅にしていた土地建物に住んでいるので、その状態を一定期間継続させてやりたいと思えば、被相続人が、遺言で、自宅のみを遺産分割禁止にすることが考えられます。

4 文案例
「私は、①長男と次女が大学を卒業するまで遺産分割を禁止する。②預貯金は、全額妻に相続させるが、妻は、この中から、長男と次女がそれぞれ大学を卒業するまで、その学費と生活費を支弁すること。」

5 他の遺言事項と合わせて効果がある
遺産分割禁止の遺言は、相続人の利害や便宜を考慮してなされるのが普通ですので、そのような遺言を書く被相続人は、他の事項についても配慮の行き届いた遺言を書いているのが普通です。4の文案例はそのために書いたものですが、文案例の①は遺産分割禁止の遺言、②は相続分の指定の遺言です。
このよううに、遺産分割禁止の遺言を書く被相続人は、それだけでは被相続人の意思が相続人に伝わらず、また、遺言したいことが完結しません。
そこで、遺産分割禁止の外に、相続分の指定等の遺言をも書く必要があるのです。

6 期間は最大5年間
遺産分割の禁止期間は、5年を越えてはなりません。
5年を越える期間を遺産分割禁止期間としても、5年経過しますと、相続人は誰でも遺産分割の請求が出来ます。
家庭裁判所も、初めの5年間は、遺産分割の審判を拒否しますが、その後は遺産分割の審判をすることになります。

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菊池捷男(弁護士)

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