コラム
相続 28 遺言事項1「遺贈」
2010年10月24日
このコラムから、遺言事項について説明します。
その1回目は「遺贈」です。
1 遺贈の意味
「遺贈」とは、遺言によって、財産を特定の者に無償で与える行為をいいます。
遺贈を受ける者のことを「受遺者」といいますが、受遺者は、相続人であっても、相続人以外のものであってもかまいません。法人であっても有効です。
2包括遺贈と特定遺贈
遺贈には「包括遺贈」と「特定遺贈」があります(964)。
包括遺贈とは、遺産の全部又は一定の割合で示された部分を与えるもの、特定遺贈は、遺産のうちの特定の遺産のみを与えるものです。
ある遺贈が、包括遺贈になるのか特定遺贈になるのかにつては、重大な効果の違いがあります。それは、「包括受遺者は、相続人と同一の権利義務を有する」(990)と規定されているからです。つまり、包括遺贈の場合は、財産の遺贈を受けたのと同じ割合で、負債も承継してしまうからなのです。
このことを文例を書いて、まとめてみました。
文例
包括遺贈の例1
私は、甥の甲山乙助に全財産を遺贈する(この場合は、甲山乙彦は、負債も全部承継する。)
包括遺贈の例2
私は、甥の甲山乙助に全財産の3分の1を遺贈する(この場合は、甲山乙彦は、負債のうち3分の1を承継する)。
特定遺贈の例1
私は、甥の甲山乙助に、岡山市北区表町三丁目○○○番の宅地○○○㎡を遺贈する(この場合は、甲山乙彦は、負債は1円も承継しない)。
特定遺贈の例2
私は、不動産全部を甲山乙助に遺贈する(この場合も甲山乙彦は、負債は1円も承継しない)。
前回のコラムでも紹介しましたが、遺言の内容が不明確であるため、「遺言の解釈」で争いになることがあります。
次の裁判例は、包括遺贈か、特定遺贈かが争われたケースです。
争いになった遺言の文言(かっこ内は裁判所の判断)
例1
私は、土地・建物、家財道具一切を挙げてXに遺贈する。(遺言書に書かれた内容は、当時、遺言者が有していた財産のすべてであるので、これは包括遺贈と解すべきである。高松高裁昭和32.12.11判決)
「遺産の全部を、X、Y、Zに贈与する。寺と地所、家はXが取る。(遺言のうちの後段部分「寺と地所、家はXが取る」の部分は不動産の特定遺贈である。東京高裁平成10.9.10判決)
コラムのテーマ一覧
- 時々のメモ
- コーポレートガバナンス改革
- 企業法務の勘所
- 宅建業法
- 法令満作
- コラム50選
- コロナ禍と企業法務
- 菊池捷男のガバナー日記
- 令和時代の相続法
- 改正相続法の解説
- 相続(その他篇)
- 相続(遺言篇)
- 相続(相続税篇)
- 相続(相続放棄篇)
- 相続(遺産分割篇)
- 相続(遺留分篇)
- 会社法講義
- イラストによる相続法
- 菊池と後藤の会社法
- 会社関係法
- 相続判例法理
- 事業の承継
- 不動産法(売買編まとめ)
- 不動産法(賃貸借編)
- マンション
- 債権法改正と契約実務
- 諺にして学ぶ法
- その他
- 遺言執行者の権限の明確化
- 公用文用語
- 法令用語
- 危機管理
- 大切にしたいもの
- 歴史と偉人と言葉
- 契約書
- 民法雑学
- 民法と税法
- 商取引
- 地方行政
- 建築
- 労働
- 離婚
- 著作権
- 不動産
- 交通事故
- 相続相談
カテゴリから記事を探す
菊池捷男プロへの
お問い合わせ
マイベストプロを見た
と言うとスムーズです
勧誘を目的とした営業行為の上記電話番号によるお問合せはお断りしております。