地方自治 概算払と前金払の違い
最高裁判所平成21.7.9判決の事例を紹介します。
行政機関情報公開法という法律があります。
正確に言いますと、行政機関の保有する情報の公開に関する法律です。
この法律は「政府の・・の諸活動を国民に説明する責務が全うされるようにする」ことと「国民の的確な理解と批判の下にある公正で民主的な行政の推進に資する」ことを目的に行政機関の保有する情報の一層の公開を図ろうとする法律です(1条)。
そのために、国民なら、誰でも、「行政機関の長に対し、当該行政機関の保有する行政文書の開示を請求することができる」行政文書の開示請求権が認められています(3条)。
しかし、国民の行政文書の開示請求も無制限に認められるというわけではありません。
非開示文書も多くあります。
いわゆる公共安全情報もその1つです。
これは行政機関情報公開法5条4号の「公にすることにより、犯罪の予防、鎮圧又は捜査、公訴の維持、刑の執行その他の公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがあると行政機関の長が認めることにつき相当の理由がある情報」です。
多くの自治体には、情報公開条例がありますが、これらの条例には、法律に定めるのと同じような規定が置かれています。非開示文書についても法律と同じような規定が置かれています。新潟県情報公開条例も同じでした。
この事件は、一審と二審が公共安全情報と認めなかった文書を、最高裁判所が、公共安全情報と認めた事例です。
同県の住民が、この条例に基づき、県警本部長に対して、「凶悪重大犯罪等に係る出所情報の活用について」と題する文書の公開請求を行いました。この文書は、警察庁内部の通達を書いた文書だったのですが、県警本部長は、その文書の中の、「出所者の入所罪名」や「出所者の出所事由の種別」を非公開文書として、開示を拒否しました。
そこで、住民が、公開しないとされた部分の取消しの訴訟を起こしたのです。
一審と二審は、住民の請求を認めましたが、最高裁判所平成21.7.9判決は、「「出所者の入所罪名」及び「出所者の出所事由の種別」に係る情報(注:個人情報は含まれていない)が公にされた場合には,出所者が,「自分が出所情報ファイルの記録対象となり出所情報の活用の対象とされる」ことを知り、「一定の限度においてではあるとしても、出所情報ファイルを活用した捜査の方法を明かす結果を招」き、今後、「より周到に犯罪を計画し,より細心の注意を払ってそれを実行しようとする可能性を否定することはできない。」また,捜査の方法の裏をかくような対抗策に出る可能性があることも否めない。」として、本件出所情報を非開示としたことを認めました。