コラム
行政 5 「保育所廃止条例はノー」と言いうる資格
2010年10月3日 公開 / 2016年3月15日更新
市立の保育所が、それを廃止する条例の制定により、廃止されることになり、そこに入所し、あるいは入所していた児童や保護者が、条例の制定をもってした保育所廃止処分の取消等を求める訴訟を起こしました。
一審の横浜地裁は、条例の制定は違法であるとしてましたが、条例の制定を取り消すことは公共の福祉に適合しないとして、保育所廃止処分取消請求は棄却し、損害賠償請求のみを認めました。
二審の東京高裁は、条例の制定は抗告訴訟の対象となる行政処分にはあたらず、条例の内容が児童や保護者の利益を侵害するものであることが明白であるとまではいえないとして、損害賠償の請求も棄却しました。
最高裁判所平成21.11.26判決は、本件条例は、その施行により保育所廃止の効果を発生させ、保護者・児童から、直接、当該保育所において保育を受けることを期待し得る法的地位を奪う結果を生じさせるので、その条例制定行為は、行政庁の処分と実質的に同視することができ、抗告訴訟の対象となる、と判示しましたが、この事件の上告人である保護者・児童は、保育所入所時に指定を受けていた保育実施期間が過ぎていたため、訴えの利益はなくなったとされ、上告棄却になりました。
が、この最高裁の判決は、『条例制定に処分性を認めた初の最高裁判決』として高い評価を受けています。
なお、この判決を論評した学者の方は、この種の紛争については、事前の差し止め、仮の義務付けの必要性がある、と指摘されていました。
参照:
児童福祉法24条
1項
市町村は、保護者の労働又は疾病・・に従い・・その監護すべき乳児、幼児又は・・児童の保育に欠けるところがある場合において、保護者から申込みがあつたときは、それらの児童を保育所において保育しなければならない。・・・
②前項に規定する児童について保育所における保育を行うことを希望する保護者は、・・入所を希望する保育所・・を記載した申込書を市町村に提出しなければならない。・・・
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