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産経新聞ソウル支局長問題

2014年8月15日 公開 / 2021年2月26日更新

テーマ:時事ネタ

コラムカテゴリ:ビジネス

弁護士の田沢です。

産経新聞ソウル支局長が,検察当局に出頭を命ぜらている問題で,オンライン名誉毀損罪なる言葉が出てきたので,解説してみました。
http://jijico.mbp-japan.com/2014/08/15/articles11655.html
産経新聞がインターネット上に掲載した韓国大統領を巡る記事について、市民団体の告発を受けて、韓国の検察当局が「オンライン名誉毀損罪」の適用を検討しているとの報道がなされました。
韓国では、一般の刑法において名誉毀損罪を定めていますが、それとは別に、情報通信網利用促進及び情報保護等に関する法律(情報通信網法)において「人を誹謗する目的で情報通信網を通じて公然と事実をあらわし他人の名誉を毀損した者は、3年以下の懲役若しくは禁錮又は2000万ウォン以下の罰金に処する」「人を誹謗する目的で情報通信網を通じて公然と虚偽の事実をあらわし他人の名誉を毀損した者は7年以下の懲役、10年以下の資格停止または5000万ウォン以下の罰金に処する」と定めて、情報通信網を通じた名誉毀損行為をより重く処罰しています。これが「オンライン名誉毀損罪」と言われるもののようです。
情報が高速で拡散する情報通信網(インターネット)を通じた名誉毀損行為は、それ以外の名誉毀損行為よりも被害が大きく悪質であるとの価値判断があるものと思われます。
ところで、我が国の名誉毀損罪は「公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金に処する」(刑法230条1項)と定めるのみで、摘示した事実が真実か否か、さらにはインターネットを通じた名誉毀損行為であるか否かを区別しておりません。また、現在の相場では、2000万ウォンが200万円、5000万ウォンが500万円程度ですから、韓国におけるインターネット規制は、日本に比べると非常に厳しいものがあるということができます。インターネット上の誹謗中傷で女性歌手や女優が自殺する事件が相次ぎ、それが社会問題になった韓国では、このような規制強化を世論も支持する向きもあるようです。
現在の報道によりますと、産経新聞の問題について韓国検察が適用を検討しているのは、オンライン名誉毀損罪のうち重い方の罪だと考えられますが、8月9日に行われた日韓外相会談において、この問題についてのやり取りがなされたようで、日韓関係にとっては極めて憂慮すべき問題に発展してしまいました。対日感情ばかりが先行して、「報道の自由」の価値に対する慎重な分析が蔑にされることのないように祈るばかりです。

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この記事を書いたプロ

田沢剛

法的トラブル解決の専門家

田沢剛(新横浜アーバン・クリエイト法律事務所)

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