マイベストプロ

JIJICO powerd by マイベストプロ

  1. マイベストプロ TOP
  2. JIJICO
  3. 法律関連
  4. 慎重な議論が必要!児童虐待の時効停止案が必要とされるワケ

慎重な議論が必要!児童虐待の時効停止案が必要とされるワケ

カテゴリ:
法律関連

児童虐待の相談件数が7万件を突破

慎重な議論が必要!児童虐待の時効停止案が必要とされるワケ

全国の児童相談所で児童虐待の相談対応件数が年々増加しており、平成25年にはついに7万件を突破しました。そんな中、自民党は児童虐待の中でも特に性的虐待を対象として、時効の見直しを検討し始めたとの報道がありました。

民事上は3年、刑事上も7年または10年で時効に

児童虐待防止法によれば、児童虐待とは「保護者がその監護する児童(18歳に満たない者)を虐待する行為」を指します。そして、児童を性的に虐待した場合、民事上の損害賠償責任(民法709条)のみならず、刑事上も強制わいせつ罪(刑法176条)ないし強姦罪(同法177条)として、処罰の対象になります。

民事上の損害賠償責任は、被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知ったときから3年(時効)が経過したとき、あるいは不法行為のときから20年(除斥期間)を経過したときに消滅するものと定められています(民法724条)。また、刑事責任も、犯罪行為が終わったときから7年(強制わいせつ罪の場合)又は10年(強姦罪の場合)の経過で公訴時効にかかるものとされています(刑事訴訟法250条2項)。

被害を言い出せず時間が経過するケースが

しかし、幼少期に親族から性的虐待を受けたとしても、虐待の意味が理解できるようになるのは思春期以降であることが多く、身近な親族が加害者となっている場合、なかなか言い出すことができないまま時間が経過してしまうケースも存在します。

また、実際にPTSD(心的外傷ストレス障害)などの疾患を発症した際、既に民事上も刑事上も責任を追及できない事態に陥っているというのでは、極めて正義に反するのではないかという問題意識が、今回の見直しの動機となっているようです。具体的には、見直し案の一つとして、被害者が成人に達するまで、時効の進行を停止させるという案が出ているようです。

慎重に議論を重ねることが望まれる

この問題は、被害者の利益と時効ないし除斥期間の制度の趣旨をどのように調和させるのかという、難しい問題をはらんでいます。時効ないし除斥期間の制度は、法律関係の早期確定といった趣旨で設けられています。責任を追及される側の立場からすれば、実際に不法行為(犯罪行為)をしたから責任を問われるのではなく、年月の経過により証拠が散逸してしまい、責任がないことを証明する証拠を提出できないため、逆に責任を問われるなどというようなことがないようにするとの趣旨もあるわけです。

被害者の利益を保護する必要があることは言うまでもないことなのですが、かといって、責任を追及される側の防御の利益もないがしろにすることはできません。今後、慎重に議論を重ねていくことが望まれます。

田沢剛

法的トラブル解決の専門家

弁護士

田沢剛さん(新横浜アーバン・クリエイト法律事務所)

Share

関連するその他の記事

その音楽アプリも違法? 悪質なリーチサイト・リーチアプリを規制する改正著作権法が10月1日施行。リンクの投稿も規制対象に?

違法コンテンツに誘引する「リーチサイト」「リーチアプリ」に関する規制が10月1日に施行。今後ユーザーが気をつけるべき点とは? 弁護士の拾井央雄さんに聞きました。

拾井央雄

拾井央雄さん

知的財産や技術系法務に強い理系出身の法律のプロ

「嵐」チケット高額転売の女性に有罪判決 「チケット不正転売禁止法」とは

人気アイドルグループ「嵐」のコンサートの電子チケットをSNSで高額転売で有罪判決。「チケット不正転売禁止法」で違法とされる行為などを、弁護士の河野晃さんに聞きました。

河野晃

河野晃さん

自然体で気軽に相談できる法律のプロ

リツイートしただけで権利侵害に? ツイッター投稿画像の自動トリミングを巡る判決が話題に。今後ユーザが気を付けるべき点とは

ツイッターのタイムライン上で発生する「画像の自動トリミング」を巡る判決が、ネットユーザの間で注目されています。今後ユーザが気をつけるべきポイントついて、知的財産権とIT分野に精通する、弁護士の内田誠さんに聞きました。

内田誠

内田誠さん

知的財産権とIT分野における「技術×法律」を得意とする専門家

気になるCM「あげるくん」で認知度増?改正著作権法が海賊版対策強化として施行 違法ダウンロードの対象や罰則は?

違法にアップロードされた著作物へのリンク情報を掲載し、海賊版に誘導する「リーチサイト」の規制も盛り込まれています(2020年10月1日に施行)。改正により、どのような行為が違法となるのでしょうか。罰則は。弁護士の得重貴史さんに聞きました。

得重貴史

得重貴史さん

国際法務・知財に豊富な経験とスキルを持つ弁護士

カテゴリから記事を探す

キーワードから記事を探す