223 マンスリーの正常化 222詳細版 めっちゃ長いです

竹下昌成

竹下昌成

テーマ:賃貸経営実務


【詳細版】マンスリーの正常化
分譲マンションのマンスリー利用の実態と課題


※このコラムは非常に長いです(笑)。

前回のコラム222「マンスリーマンションを『正常化』するには?」では、マンスリーマンションの短期利用について、問題点と、それぞれの立場でできる対応をまとめました。

今回は、その詳細版です。

一つの分譲マンションの一室で、所有者が認識していなかったマンスリー利用が判明したことをきっかけに、

賃貸借契約
所有者の承諾
管理規約
旅館業
消防
公衆衛生
宿泊税
消費税
保証
保険
予約サイト
マンション管理
宅地建物取引業

などについて調査を続けてきました。

さらに、国や自治体、警察、消防、業界団体、保証会社、保険会社等にも、質問、照会、情報提供等を行っています。

その内容を一つにまとめたため、普通のコラムというより「公開レポート」に近い内容です。

めちゃくちゃ長いです(笑)。

先に結論だけ知りたい方は、コラム222をお読みください。

コラム222
「マンスリーマンションを『正常化』するには?
事故が起きる前に、それぞれができること」

https://mbp-japan.com/hyogo/fp-takeshita/column/5236376/

なお、公開版とするため、現在係属している個別事件の相手方、物件、担当者等を特定し得る固有名詞や情報については削除又は一般化しています。

一方、行政機関、公的機関、業界団体等については、この問題を調べたい方が実際に確認できるよう、可能な限り具体的に記載しています。


■ 本レポートの作成にあたり照会・情報提供等を行った主な関係先

今回の調査では、一つの法律、一つの行政機関だけで判断するのではなく、契約、旅館業、マンション管理、消防、税務、宅建業、保証、保険等、それぞれの所管・立場から確認するため、関係先への質問、照会、情報提供等を行っています。

主な関係先は次のとおりです。

1.国土交通省
不動産・建設経済局 不動産業課

2.国土交通省
住宅局 参事官(マンション・賃貸住宅担当)

3.国土交通省
住宅局 安心居住推進課

4.国土交通省
九州地方整備局 建政部 住宅整備課

5.厚生労働省
健康・生活衛生局 生活衛生課

6.観光庁
住宅宿泊業関係担当部署

7.金融庁
資産運用・保険監督局 保険課

8.京都市
医療衛生センター 宿泊施設適正化担当

9.福岡県
建築都市部 建築指導課 宅地建物取引業係

10.福岡市
宿泊税担当部署

11.福岡市博多消防署
予防課

12.福岡市博多区保健福祉センター(保健所)

13.福岡県博多警察署

14.公益社団法人 福岡県宅地建物取引業協会

15.一般社団法人 マンション管理業協会

16.公益社団法人 全国宅地建物取引業協会連合会

17. 保証会社

18.損害保険会社


このほか、本件に関係する建物管理会社、予約サイト運営会社、契約関係者等にも確認を行っています。

なお、各機関への照会は、それぞれの所管事項について質問、確認又は情報提供を行ったものです。

ここに名称を掲載した各機関・各社が、本レポート全体について同一の見解を示した、あるいは本レポートの内容を承認した、という意味ではありません。


■ はじめに 本レポートの結論

本レポートは、マンスリーマンションという事業そのものを否定するものではありません。

所有者がその利用を認識し、契約上もマンスリー事業として利用する権限があり、必要な承諾が得られ、1か月未満の利用を行う場合には必要な旅館業上の許認可等が確認されているのであれば、問題の性質は大きく異なります。

今回の調査を通じて問題だと感じたのは、

「マンスリーだから賃貸である」

「民泊ではないから問題ない」

「公然と営業しているから問題ない」

「予約サイトに掲載されているから問題ない」

「グレーだが一般に行われている」

といった認識によって、その先の確認が止まってしまうことです。

私が提案する確認は、決して複雑なものではありません。

基本は、次の4点です。


① 契約書を確認する

その物件をマンスリー事業に利用できる契約になっているか。


② 必要な承諾書を確認する

契約書からマンスリー利用、反復的な第三者利用等の権限が明確でなければ、所有者の承諾があるか。


③ 1か月未満であれば、旅館業の許認可を確認する

必要な許認可が確認できなければ、所管行政へ確認する。


④ 管理規約を確認する


まず、この4つです。

問題があれば、契約を改める。

必要な承諾を得る。

必要な許認可を取得する。

あるいは、1か月未満の営業をやめる。

判断に迷えば所管行政へ確認する。

私は、このように現在の利用実態を適正な状態へ移行させることを、

「正常化」

と呼んでいます。


■ マンション管理業界に求めること

マンション管理の現場に、高度な法律判断を求める必要はありません。

まず、

「マンスリー利用を把握したら、一度確認する。」

これだけです。

民泊とマンスリーを法的に同一視する必要もありません。

しかし、利用者が反復して入れ替わる以上、

誰が利用しているのか。

誰が鍵を持っているのか。

緊急時に誰へ連絡するのか。

火災や事件が発生した場合に利用者を把握できるのか。

という管理上の問題は共通します。

現場で判断できなければ本社・本部へつなぐ。

本社・本部でも判断できなければ行政へつなぐ。

制度は本部で設計し、現場では確認する。

それでよいと思います。


■ 宅地建物取引業界に求めること

宅地建物取引業界には、管理業界より高い水準を求めるべきだと考えています。

宅地建物取引業者は、不動産取引の専門家です。

特に、

自ら物件を借り、

自ら第三者に提供し、

自ら事業として収益を得るのであれば、

自ら契約書を確認する。

自ら必要な所有者承諾を確認する。

1か月未満なら自ら旅館業の許認可を確認する。

疑義があれば行政へ確認する。

問題があれば自ら直す。

私は、この考え方を、

「自ら運営ルール」

と呼んでいます。

これは既存の法律上の制度名称ではなく、私自身の提案名称です。

自ら調べ、自ら確認し、自ら正常化する。

源流である不動産会社が正しいことが、その後につながる保証、保険、予約サイト、建物管理等にとっても重要です。






■ 第1部 所有者の不安から始まった

今回の調査の出発点は、法律論ではありません。

一人のマンション所有者として抱いた、

「もし、この部屋で事故や事件が起きたら、どうなるんだろう?」

という素朴な不安でした。

所有者が知らないまま第三者が反復して住戸を利用し、その状態で火災、漏水、犯罪その他の重大な事故・事件が発生すれば、問題は単なる賃貸借契約上の問題にとどまりません。

特に殺人事件等の重大事件によって、売却価格、賃料、流通性その他の市場評価に影響し、所有者の資産価値が低下する可能性もあります。

「誰が責任を取るのか」を事故後に争う前に、

「誰が利用することを、誰が確認したのか」

を事故前に明確にする。

これが今回の調査の原点です。


■ 1 なぜ所有者の承諾が重要なのか

通常の賃貸であれば、所有者は誰にどのような契約で貸すのかを判断し、その利用に伴う一定のリスクを自ら選択して引き受けています。

通常の住居として貸すのか。

法人の社宅として利用させるのか。

第三者が反復して利用するマンスリー事業に供するのか。

これらをすべて同じリスクとして扱う必要はありません。

所有者自身が違いを理解した上で、

「その利用を認める」

と判断することが重要です。

所有者の承諾は、単なる契約書上の形式論ではありません。

自分の所有物をどのような用途に利用させ、どのようなリスクを負わせるのかを決めるための重要な意思決定です。


■ 2 重大事件が起きた場合の資産価値

あえて極端な例を挙げます。

所有者が認識していないマンスリー利用者が住戸を利用している期間中に、その住戸内で殺人事件等の重大事件が発生したとします。

建物自体が物理的に損傷していなくても、その事件が当該住戸の市場評価に影響する可能性があります。

売却価格。

賃料。

入居者募集。

流通性。

そして、マンション全体への影響。

その経済的不利益を誰が負担するのでしょうか。

所有者でしょうか。

マンスリー運営事業者でしょうか。

実際の利用者でしょうか。

保険によって補償されるのでしょうか。

具体的な法的責任は、契約内容、事故・事件の内容、因果関係、予見可能性、各当事者の行為等によって判断されます。

ここで特定の主体が当然に全損害を負担すると断定するものではありません。

私が問題にしたいのは、その一歩前です。

所有者がその利用形態を知らなければ、そのリスクを認識することも、自ら避けることもできません。

知らされていないリスクは、自ら避けることもできないのです。


■ 3 一室の問題では終わらない

例えば、80室のマンスリー物件を運営する会社が一社あるとします。

それぞれが40戸の分譲マンションの一室だったと仮定すれば、

80室 × 40戸 = 3,200世帯

です。

さらに、同じ規模の事業者が100社あれば、

80室 × 100社 = 8,000室

8,000室 × 40戸 = 32万世帯

です。

もちろん、

「実際に32万世帯が危険にさらされている」

という意味ではありません。

影響範囲を考えるためのモデル計算です。

しかし、一室の確認不足が一室だけで完結せず、多数の分譲マンションに点在する可能性がある事業である以上、

「今まで事故が起きていないから大丈夫」

だけでは済まないと思います。


■ 4 「公然」は確認ではない

マンスリー事業は、インターネット上で公然と募集されていることがあります。

しかし、

「公然」は確認ではありません。

事業者が公然と営業していたとしても、それだけで所有者の承諾が生じるわけではありません。

また、

「掲載」は適法性の証明ではありません。

予約サイトに物件が掲載されていることも、その事業者が当該物件をその用途に利用する権限を有していることや、必要な行政手続が完了していることを当然に意味するものではありません。





■ 第2部 「マンスリーだから大丈夫」は行政上の結論ではない

「マンスリー」

「ウィークリー」

「定期借家」

という名称だけで、行政上の取扱いが決まるわけではありません。

特に1か月未満の利用について疑義があるのであれば、所管行政に確認すればよい。

民間事業者が旅館業法について最終的な法律判断をする必要はありません。

「グレーだから営業を続ける」のではなく、

「グレーだから行政に確認する」。

グレーはセーフではありません。



■ 1 京都市267施設への行政対応





今回の調査で特に重要な行政事例となったのが、京都市による2024年の対応です。

京都市は、市民からの通報を契機として、「ウィークリーマンション等」と称して宿泊者を募集していた施設を調査しました。

その結果、267施設について調査・指導を行い、最終的に全267施設の営業中止・撤退を確認したことを公表しています。

特に重要なのは、事業者側には、

「ウィークリーマンション等について旅館業の許可は必要ない」

との認識があったとされる点です。

つまり、

事業者側の認識と行政側の判断が一致していなかった。

ということです。

「ウィークリーだから」

「マンスリーだから」

「賃貸借契約だから」

という事業者側の認識によって、行政への確認そのものが行われなくなることが問題です。


■ 2 国の2018年通知

観光庁及び厚生労働省は2018年11月6日、

「住宅宿泊仲介業者等における短期賃貸借物件等の取扱いについて」

を発出しています。

国も、短期賃貸借と旅館業との関係について、一般に1か月を一つの目安としながら、実際の営業形態やサービス内容等を踏まえて確認する考え方を示しています。

また、短期賃貸借物件を扱う掲載サイト等についても、最低利用期間の設定や、契約の一部キャンセルによって実質的に短期間の利用にならないようにすること、疑義がある場合には地域の旅館業担当部署へ照会すること等が示されています。

つまり、国はすでに、予約サイト等を短期利用確認の「入口」として利用するという発想を持っています。


■ 3 1か月未満なら確認する

ここは誤解のないように書いておきます。

「全国で1か月未満なら例外なくすべて旅館業である」

と断定しているわけではありません。

具体的な営業形態等によって行政上の判断が必要となる場合があります。



だからこそ、やることは簡単です。

1か月未満なら旅館業の許認可を確認する。

許認可が確認できなければ、所管行政に確認する。

自分で難しい行政法解釈をする必要はありません。


■ 4 きちんと営業している旅館・民泊事業者との公平性

正規に旅館業許可を取得する場合には、建築、消防、設備、図面、行政申請等、複数の確認が必要となります。

民泊や旅館業を適法に行う事業者は、

使用権原。

管理規約。

消防・安全設備。

行政手続。

必要な設備投資。

宿泊者管理。

税金。

などについて確認し、費用と労力を負担しています。

一方、

「マンスリー」

という名称で通常の住宅賃貸として処理されることによって、同様の短期利用を反復しながら、本来必要となる確認や負担を回避できるとすればどうでしょう。

ルールを守っている事業者の方がお金がかかる。

確認しない事業者の方が安く営業できる。

それでは、正直者が損をする市場になってしまいます。

正常化は、居住者や所有者を守るだけではありません。

適正に営業している事業者を守ることにもつながります。


■ 5 旅館業法だけではない

1か月未満の短期利用については、旅館業法だけを確認すれば終わりではありません。

少なくとも、

旅館業法。

消費税。

宿泊税。

について確認が必要になる場合があります。

さらに、

賃貸借契約。

所有者の承諾。

管理規約。

消防。

保証。

保険。

それぞれ別の問題です。

一つクリアすれば全部クリア、ではありません。


■ 6 税、消防、公衆衛生は別々だが、見ている住戸は同じ

消防から見れば、

「今、その住戸に誰がいるのか。」

公衆衛生から見れば、

「誰が、いつ利用したのか。」

マンション管理から見れば、

「誰を正規の利用者として把握しているのか。」

税務から見れば、

「実際にどのような取引が行われているのか。」

それぞれ法令も所管部署も異なります。

しかし、見ている対象は同じ一つの住戸です。

だからこそ、一つの制度で問題が見つかった場合に、必要な制度へつなぐことが重要になります。






■ 第3部 二つの不動産業界に何を求めるか

マンション管理業界と宅地建物取引業界は、明確に分けて考えた方がよいと思います。

両者に同じ水準を求める必要はありません。

マンション管理の現場には、

「気づいて、確認して、つなぐ。」

宅建業者には、

「自ら調べ、自ら確認し、自ら正常化する。」

ことを求める。

これが現実的だと思います。


■ 1 書いていなければ、何をやってもよいのでしょうか?

管理規約や使用細則は、マンション内で将来起こり得るすべての行為を予測し、一つひとつ「禁止」と列挙するものではありません。

「マンスリー利用を禁止する」と書かれていない。

「7日間の短期利用を禁止する」と書かれていない。

だから自由に行ってよい。

そのような理解でよいのでしょうか。

管理規約は「禁止事項の完全な一覧表」ではありません。

「禁止と書いていない」ことは、

「認められている」ことと同じではありません。

書いていないから、やってよい。

ではなく、

書いていないからこそ、確認する。

これが共同住宅を事業に利用する際の基本ではないでしょうか。


■ 2 民泊・マンスリーは「明示許可型」に

そこで私は、通常の住居利用とは異なる利用について、

「禁止されているか」

を探す方式ではなく、

「その利用が許容されているか」

を確認する方式に変えることを提案しています。

事務所利用を認めるのであれば、その旨を明確にする。

民泊利用を認めるのであれば、その旨を明確にする。

反復的なマンスリー事業利用を認めるのであれば、その旨を明確にする。

つまり、

「禁止されていなければ可能」

から、

「許容されていれば可能」

へ。

考え方を変えるのです。


■ 3 「今までやっていた」は正しさの根拠ではない

長期間行われていた。

業界で一般的に行われていた。

予約サイトに掲載されていた。

公然と行われていた。

それらは事実であったとしても、それだけで契約、管理規約、許認可等との整合性が確認されたことにはなりません。

「公然」は「確認」ではありません。

今まで行われていたから、これからも認める。

ではなく、

今までの運用が間違っていたのであれば、これから正しくする。

過去の運用を追認するためにルールを合わせるのではありません。

現在のルールを確認し、必要であれば、これからの運用を正しい状態へ移行させる。

国が明示する。

現場が確認する。

事業者が直す。

これが「正常化」です。


■ 4 福岡市の認識と対応

福岡市は、ウィークリーマンション等の短期賃貸について、以前から旅館業法との関係を認識し、一定の対応を行っています。

福岡市が公表している旅館業法に関する資料では、旅館業に該当するか否かは、契約や営業の名称だけではなく、

宿泊料の有無。

営業の社会性・継続反復性。

利用者の生活の本拠となっているか。

など、実際の営業実態を踏まえて判断する考え方が示されています。

その中では、

「使用期間が1か月未満(ウィークリーマンション等)」

について、

「生活の本拠ではないと考えられる例」

として明示されています。

また、福岡市の宿泊税に関する資料でも、ウィークリーマンション等の短期賃貸住宅について、営業実態によっては旅館業法上の営業施設と判断され、宿泊税の課税対象となる場合があることが示されています。



つまり、

「マンスリー」

「ウィークリー」

「定期借家」

などの名称を付ければ、当然に通常の賃貸住宅として扱われるという整理にはなっていません。


■ 5 福岡市もインターネット上の施設を調べている

福岡市では、無許可・無届の宿泊営業への対応や、インターネット上の掲載情報を利用した監視等にも取り組んでいます。

しかし、予約サイトを実際に見ると、

建物名。

地域。

間取り。

料金。

などは分かっても、具体的な部屋番号まで公開されていないケースがあります。

行政からすれば、

「このマンションらしい」

までは分かっても、

「何号室なのか」

まで特定できないことがあります。

ここで重要になるのが、実際の建物を日常的に管理している建物管理会社や管理組合です。


■ 6 管理会社ではさらに簡単でよい



管理会社については、契約書や許認可を自ら詳細に審査することまで求める必要はありません。

現場で反復的なマンスリー利用を把握したら、

「これは確認済みの利用なのか。」

と一度立ち止まる。

必要なら本社・本部へ上げる。

本社・本部から所有者、管理組合、運営事業者等へ確認する。

疑義があれば行政につなぐ。

例えば福岡市の場合、旅館業に関する相談・情報提供は、各区の保健福祉センター(保健所)衛生課が入口になります。

博多区の場合は、

福岡市博多区保健福祉センター(保健所)衛生課
電話 092-419-1125

です。

もちろん、地域が違えば所管する行政機関も変わります。

重要なのは電話番号を覚えることではありません。

「自分で判断できなければ、所管行政に事実を伝えて確認する」

というルートを知っておくことです。

最も避けたいのは、

「マンスリーはグレーだけど仕方ない」

「先輩からこう教わった」

で終わることです。


■ 7 民泊とマンスリーを同一視する必要はない

民泊とマンスリーは法律上同じものではありません。

しかし建物管理という観点から見れば、利用者が反復して入れ替わる場合には共通する問題があります。

誰が利用しているのか。

誰が鍵を持っているのか。

緊急連絡先は誰なのか。

共用部分を誰が利用しているのか。

ごみはどのように処理されるのか。

火災時に誰がいるのか。

事件が起きたとき、利用履歴を確認できるのか。

31日契約になった瞬間に、これらの管理上のリスクが消えるわけではありません。

民泊とマンスリーを法的に同一視する必要はない。

しかし、

民泊で鳴る管理上の警戒ベルは、反復型マンスリーでも一度鳴らす。

これくらいでいいと思います。


■ 8 宅建業界にはさらに高い水準を求める

宅地建物取引業者は、不動産取引の専門家です。

特に宅建業者自身が、

自ら物件を借り、

自ら第三者へ提供し、

自ら継続的な事業収益を得るのであれば、

一般の賃借人以上に自律的な確認を求めても不合理ではないと思います。

管理規約。

契約書。

所有者の承諾。

1か月未満なら旅館業の許認可。

まず、この4点です。

専門家であることを確認不要の理由にするのではなく、

専門家であるからこそ確認水準を一段高くする。

という考え方です。




■ 第4部 予約サイト・保証・保険――それぞれの「入口」

今回の調査で見えてきたのは、

確認する主体が存在しない

という問題ではありません。

賃貸借契約。

宅建業者。

管理会社。

保証会社。

予約サイト。

保険会社。

行政。

それぞれに確認できる入口があります。

問題は、それぞれが、

「そこは別の誰かが確認しているだろう。」

と考えた場合です。

その結果、

自己申告という「確認の空白」

が生まれます。


■ 1 保証会社という入口

保証会社は、申込時に提示された賃貸借契約や利用目的を前提として審査します。

だからこそ、情報の上流が重要です。

実際の利用形態



それに合った賃貸借契約



必要な所有者承諾



正しい利用目的で保証会社へ申告



保証会社が正しい前提で審査

という流れが必要です。

宅建業者自身が上流で正しい情報を作らなければ、保証会社だけで実態を把握することには限界があります。


■ 2 予約サイトという入口

予約サイトも重要な入口です。

国は2018年通知において、すでに短期賃貸借物件を掲載するサイトを確認の入口として利用する考え方を示しています。

掲載時の最低確認事項は、難しくする必要はありません。

契約書。

必要な承諾書。

1か月未満なら旅館業の許認可。

管理規約・使用細則。

この4点です。

サイトごとの手数料、UI、キャンセル条件、サービス内容等まで統一する必要はありません。

それらは競争領域です。

共通化するのは、

「その物件をその事業に利用する基本的な権限があるのか」

という入口だけでよいと思います。


■ 3 保険という入口

マンスリー事業を対象とする保険・補償制度も重要な入口です。

マンスリー利用を把握しているか。

所有者と賃借人の別を確認しているか。

原賃貸借契約を確認しているか。

マンスリー事業利用権限を確認しているか。

所有者の承諾を確認しているか。

管理規約・使用細則を確認しているか。

1か月未満の利用について旅館業等の行政手続を確認する仕組みがあるか。

ここで求めているのは、保険会社による最終的な法律判断ではありません。

どのような事実確認・制度設計が行われているのか。

という確認です。


■ 4 保険会社に求めることも4点でよい

保険会社に、賃貸借法、区分所有法、旅館業法等について最終的な法律判断を求める必要はありません。

マンスリー事業用の保険・補償制度を引き受ける入口で、

契約書。

必要な承諾書。

1か月未満なら旅館業の許認可。

管理規約・使用細則。

まず、この4点を確認する。

許認可の必要性自体が分からなければ、

「所管行政へ確認してください」

とすればよい。

それで十分です。


■ 5 一室の中に存在する不整合

一つの住戸について、

原賃貸借契約では住居利用。

保証も住居利用を前提。

一方、予約サイトではマンスリー事業として掲載。

さらにマンスリー事業用の補償制度への加入資料が存在する。

このように、複数の関係が異なる前提で成立している場合があります。

一つ一つの制度だけを縦に見れば、問題に気づきにくいかもしれません。

しかし横に並べると、

「契約上の利用」

「実際の利用」

「保証上の利用」

「保険上の利用」

が一致しているのかという疑問が見えてきます。

これが、

「確認の空白」

です。




■ 第5部 処分ではなく「正常化」

ここまでかなり長く書いてきました。

でも、正常化の方法は単純です。

契約書を確認する。

必要な承諾書を確認する。

1か月未満なら旅館業の許認可を確認する。

管理規約を確認する。

基本は、この4点です。

契約上の権限がなければ、契約を改めるか所有者から承諾を得る。

1か月未満の営業について必要な許認可がなければ、許認可を取得するか、1か月未満の営業をやめる。

判断に迷えば行政に確認する。

これが「正常化」です。


■ 1 正常化は事業者を処罰することだけではない

私は、現在掲載されているマンスリー物件を一斉に営業停止させたり、予約サイトから一斉削除したりすればよいとは考えていません。

現在問題がある物件についても、正常化できるものは正常化すればよい。

管理規約を確認する。

契約上の権限が足りない。

ならば、契約を直す。

所有者承諾が必要である。

ならば、承諾を得る。

1か月未満の営業について旅館業の許認可が必要である。

ならば、許認可を取得する。

許認可を取得しない。

ならば、該当する営業方法をやめる。

今まで間違っていたなら、これから正しくすればいい。

それだけです。


■ 2 既存物件には移行期間を設ける

既存掲載物件については、一定の移行期間を設けることが現実的だと思います。

その間に各事業者が、

契約書。

必要な承諾書。

1か月未満なら旅館業の許認可。

管理規約。

を確認する。

重要なのは、

「今日から全部止める」

か、

「何もしない」

かの二者択一にしないことです。


■ 3 新規物件と既存物件を分ける

新規掲載物件については、最初から新しい確認基準を適用する。

すでに営業している既存物件については、一定の移行期間を設けて同じ確認を行う。

この区別によって、現在営業している事業者に突然過大な負担を与えることなく、将来に向けて同じ基準へ移行できます。


■ 4 予約サイトを使った全国的な正常化

予約サイトは、全国的な正常化を進めるための非常に有効な入口になり得ます。

新規掲載については、最初から4点を確認する。

既存掲載については、一定の移行期間内に4点を再確認する。

確認できた物件は、そのまま掲載を継続する。

不足している物件には正常化を求める。

移行期間を経ても確認できない物件について、掲載内容の変更や掲載停止を検討する。

こうすれば、行政が全国のマンスリー物件を一件ずつ探して回る必要はありません。


■ 5 保険でも同じ正常化ができる

保険・補償制度も同じです。

新規引受時に、

契約書。

必要な承諾書。

1か月未満なら旅館業の許認可。

管理規約。

を確認する。

既存契約については、更新等の機会を利用して同じ確認を行う。

これだけでも、事業利用権限と保険との不整合を相当程度防ぐことができます。


■ 6 行政への情報提供は、会社と自分自身を守る

今回調べていて、ここは非常に重要だと思いました。

不動産会社でも、

建物管理会社でも、

管理組合でも、

保証会社でも、

保険会社でも、

所有者でも、

居住者でも同じです。

仕事や生活の中で、

「あれ?」

と思うことがあります。

でも、

「自分の判断が間違っていたらどうしよう」

「余計なことをしない方がいい」

「昔からこうしているし」

と流してしまう。

自分で違法か合法かを決める必要はありません。

分からなければ、所管する行政機関に事実を伝えて確認すればいい。

例えば、その後、そのマンションで大きな火災や事件が起きたとします。

そのとき、

「気付いていました。でも何もしませんでした」

と、

「疑問を感じたので社内に報告しました。関係先にも確認しました。それでも分からなかったので行政にも相談・情報提供しました」

では、意味が違います。

これは責任逃れの話ではありません。

事故や事件が起きる前に、自分の立場でできることをやる。

行政への相談・情報提供は、

居住者を守る。

所有者を守る。

適正に営業している事業者を守る。

会社を守る。

そして、自分自身を守る。

そういう意味もあると思います。


■ どこへ相談すればいいのか?

ここまで読んで、

「結局、どこへ連絡すればいいの?」

と思う方もいるでしょう。

旅館業法や無許可営業の疑いについては、所在地を管轄する保健所・旅館業担当部署へ相談します。

福岡市の場合は、各区の保健福祉センター(保健所)衛生課です。

例えば博多区の場合、

福岡市博多区保健福祉センター(保健所)衛生課
電話 092-419-1125

です。

消防設備、避難経路、消防安全については、所在地を管轄する消防署・消防局。

宿泊税については、自治体の宿泊税担当部署。

消費税等の国税については、税務署・国税当局。

宅地建物取引業者については、免許行政庁である都道府県等の宅建業担当部署。

管理規約等については、管理会社・管理組合。

保証契約については保証会社。

保険契約については保険会社。

犯罪や重大な防犯上の問題については警察。

それぞれの所管があります。

でも、

「どこが所管か分からない」

という場合でも、短期宿泊・旅館業との関係が疑われるのであれば、まず所在地を管轄する保健所・旅館業担当部署へ、

「このような短期利用が行われています。旅館業法上の確認が必要でしょうか?」

と相談するところから始めればいいと思います。

自分で、

「これは違法です」

と断定する必要はありません。

事実を伝える。

行政に確認してもらう。

必要であれば、適切な所管先へつないでもらう。

それでいいのです。


■ おわりに

今回の調査は、一人のマンション所有者として、

「もし、この部屋で事故や事件が起きたら、どうなるんだろう?」

という疑問を持ったことから始まりました。

所有者が知らない第三者が反復して利用する住戸で火災や漏水が発生した場合、誰が利用しているのか。

犯罪が発生した場合、誰がいつ利用していたのか。

そして、殺人事件等の重大事件が発生し、その結果として所有不動産の売却価格、賃料、流通性等に影響し、所有者の資産価値が低下した場合、その経済的不利益を誰が負担するのか。

これはマンション所有者にとって、決して抽象的な問題ではありません。

しかも、その利用を所有者自身が選択し、承諾していたのであればまだしも、所有者が利用自体を知らなかったのであれば、問題の意味は大きく変わります。

「誰が責任を取るのか」を事故後に争う前に、

「誰が利用することを、誰が確認したのか」

を事故前に明確にする。

一室の利用実態を調査した結果、

賃貸借契約。

保証。

マンション管理。

予約サイト。

保険。

旅館業。

消防。

公衆衛生。

宿泊税。

消費税。

宅建業界。

マンション管理業界。

へと問題がつながりました。

これは、問題を無理に広げた結果ではありません。

一つの住戸の実際の利用を追っていった結果、自然にこれらの制度へ到達したものです。

そして、それぞれの関係者が、

「そこは別の誰かが確認しているだろう。」

と考えれば、

誰も全体を確認しない、

「確認の空白」

が生まれます。

でも、解決策まで複雑にする必要はありません。

マンション管理の現場では、マンスリー利用を把握したら、一度確認する。

宅建業者は、自ら運営するなら、自ら確認する。

予約サイトでは、掲載時に基本的な利用権限を確認する。

保証会社では、申告された用途と実際の利用形態を確認する。

保険では、引受時に基本的な事業利用権限を確認する。

そして、

契約書。

承諾書。

1か月未満なら旅館業の許認可。

管理規約。

まず、この4つを確認する。

足りなければ直す。

分からなければ行政に聞く。

それだけです。

行政が全国のマンスリー物件を一件ずつ発見して指導し続けるよりも、

宅建業者。

管理会社。

予約サイト。

保証会社。

保険会社。

等の既存の入口を利用して、事業者自身が確認し、必要なものを正常化する仕組みの方が持続的です。

「処分して止める」

だけではなく、

「確認して直す」。

「入口を正せば、自ら正常化する」。

これが私の提案です。

最後に、今回の調査を通じて得た考えを改めて記します。

「公然」は確認ではない。

「掲載」は適法性の証明ではない。

「今までやっていた」は正しさの証明ではない。

「グレー」は結論ではない。

「マンスリー」は確認を省略する理由ではない。

「グレーだから仕方ない」ではなく、

「グレーだから確認する」。

判断に迷ったら、行政と連携する。

今回の詳細版が、マンスリー事業を排除するための資料ではなく、

居住者を守る。

所有者を守る。

適正に営業している事業者を守る。

会社を守る。

そして、自分自身を守る。

そのために、宅地建物取引業界、マンション管理業界、予約サイト、保証会社、保険会社、行政その他の関係者が、それぞれの持ち場で「確認の空白」を一つずつ埋めていく材料になればと思います。


■ 関連コラム

219【マンスリーマンションは「民泊・旅館」と違う!?】

https://mbp-japan.com/hyogo/fp-takeshita/column/5235237/


222【マンスリーマンションを「正常化」するには?
事故が起きる前に、それぞれができること】

https://mbp-japan.com/hyogo/fp-takeshita/column/5236376/

\プロのサービスをここから予約・申込みできます/

竹下昌成プロのサービスメニューを見る

リンクをコピーしました

竹下昌成プロは神戸新聞社が厳正なる審査をした登録専門家です

関連するコラム

プロのおすすめするコラム

コラムテーマ

コラム一覧に戻る

プロのインタビューを読む

不動産投資の経験豊富なお金のプロ

竹下昌成プロへの仕事の相談・依頼

仕事の相談・依頼