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寺田淳

シニア世代が直面する仕事と家庭の問題解決をサポートする行政書士

寺田淳(てらだあつし) / 行政書士

寺田淳行政書士事務所

コラム

介護について

2020年5月8日 公開 / 2021年3月2日更新

コラムカテゴリ:法律関連


【今日のポイント】

 コロナウイルスによる自粛期間も1か月余、さすがにやることがなくなったのか、同世代前後の同僚、知人からの相談半分世間話半分の電話が続いています。なかでも老親の健康状態の不安や介護に関しての相談もちらほら・・・

 なんといっても我々世代の親ともなれば80代は当たり前で、半数近くは90代の親となっています。今まで仕事にかまけて、健康な親の状態にかこつけて、何も考えてこなかった我々世代もようやく事の重大さを自粛期間中に気付いたようです。

 今回は官庁の提示したデータをもとに介護について紹介したいと思います。

【データで見る介護】

 まず、厚労省及び総務省統計局の調査によりますと要介護、要支援の認定者の年齢構成は以下のようになっていました。
65~69才 3% 
70~74才 約6%
75~79才 約13%
80~84才 28%
85才以上 約60%!! ~ここで一気に増大しているのが分かります。

 介護が必要になった原因としては、厚労省「国民生活基礎調査平成28年版」によりますと
・男性では
 脳血管疾患
 認知症
 高齢による衰弱
 骨折や転倒
 心疾患、関節疾患

・女性では
 認知症
 高齢による衰弱
 骨折、転倒
 関節疾患
 脳血管疾患

 となっています。

【各認定区分と介護の場所】

 認定の区分は、要支援の場合で、1~2の2段階、要介護の場合は、1~5の5段階、合わせて7段階の区分が設けられています。

 身体状態から見て、要支援、要介護共にランク1までであれば何とか家庭で凌げる? ですが、要介護の場合はランク2から生活全般に何らかの支援、排せつや食事には介助が必要となるとありました。

 介護される側の想いとしては、対象者の約6割は「施設での介護」を希望しており、自宅(「自分、又は子供の)での介護(家族介護)を希望するのは約33%でした。 一見すると逆の割合なのではと思えますが、施設介護を望むと答えた方は、その理由として「家族に迷惑を掛けたくない」という想いが80%以上とありました。

 続くのは、「充実した介護が期待出来る」「専門的な医療を受けられる」といった、いわば前向きな思いからというのが、約30%でした。

 最後に、「家族介護は期待出来ない」「介護してくれる人がいない」「自宅に介護する場所がない」といった家族、家庭の事情によって施設を選ばざるを得ないと答えたのが約12~16%の割合でした。

【介護費用の目安】

 あくまでも一般的、平均的な算定ですが、初期費用としては住宅のバリアフリー化、介護ベッドの購入等、基本的な部分で概ね70万円弱と推定されます。ここに毎月発生する固定費用として、概ね約8万円と仮定すると介護期間が5年だった場合で約480万円、ここに先の初期費用70万がプラスされ、550万円前後が目安となります。

 介護期間5年というのは、実際の介護期間の集計から平均値が約4年7カ月というデータからの設定ですが、7人に1人の割合で介護期間が10年以上というケースも存在しています。

【もし介護が必要になった時は】

 さて、介護が必要な状態になった時に直面する課題を事前に考えておくことは自身にとっても、家族にとっても重要な意味を持つものです。以下に主な項目を紹介します。

1)誰に介護をしてもらいたいのか?
 配偶者、息子(息子夫婦、娘(娘夫婦)、プロ(ヘルパー、ケアサービス)、あるいは介護保険と先に挙げた家族のうちの誰かの世話で介護を希望するのか?

2)どこで介護してもらいたいか?
 先に紹介していますが、自宅で? 息子や娘夫婦の家で? 専門病院や施設で? これも事前に決めておくべき課題です。

3)介護費用は?
 自分名義の預貯金で対応するのか?、自分の年金や保険などで対応するのか?、年金と家族の援助でか?、全て家族に委ねる事になるのか? きれいごとでは済まない問題ですから、より慎重な検討が必要な項目です。

4)介護生活に入ってからの財産管理は?
 身体は不自由でも判断力に支障がない場合ならば、配偶者に一任するか?、世話をしてもらう息子(娘)に委ねるのか?、それとも既に自分で後見人を決めているのでその方に任せるのか? これも簡単には決められない課題の一つです。ちなみに判断能力を喪ってから後見人を選任する場合は法定後見人の選任となり、家裁による後見人の決定までは平均して4ヵ月前後かかっています。その間の当人名義の財産には指一本触れることが出来なくなります。

【最後に】

 介護状態と言いますと、多くは認知症のケースを口にしますが、実際はこれだけに限りません。突然の発病や事故等によって頭は明瞭でも体が動かない場合もあります。さらには植物状態になる可能性もあるのです。ゴールの見えない介護はいろいろなケースで発生するのです。

 ここまで紹介してきた内容は、殆どの場合介護が必要になってからでは間に合わない項目であることはお判りになったと思いますが、
これは高齢の親が、親だけが考える問題ではありません、(まだまだ若い)子の立場でも十分遭遇する危機と認識して、その場合どうするかを考えておくべきことなのです。

 今テーマは一応対象年齢を60代の子に向けてはいますが、本来は子が50代の頃に=親が70代のうちに考えるべき内容ということも最後に付け加えておきます。

この記事を書いたプロ

寺田淳

シニア世代が直面する仕事と家庭の問題解決をサポートする行政書士

寺田淳(寺田淳行政書士事務所)

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