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高塚哲治

欠陥住宅問題を解決し良質な建築の創造へ導く一級建築士

高塚哲治(たかつかてつじ) / 建築家

タウ・プロジェクトマネジメンツ一級建築士事務所

コラム

「建築って何?(28)」コンテクストと建築

2012年8月9日 公開 / 2020年12月28日更新

テーマ:建築の仕組み

コラムカテゴリ:住宅・建物

 建築物が位置する場所には、そこに住まう人たちによって長年に渡り育まれてきた、個性豊かな文化や歴史、芸術が存在しています。その場所に住まう人たちによって守られてきた考え方や伝統には、その場所と人間とのつきあい方や作法が示されています。伝統的につくられてきた建築物は、こうした作法を守って建てられています。  
 これらを無視しては、自然からしっぺ返しを受けることは確実です。その場所固有の雰囲気や環境、町並みなどは、時間をかけて少しずつ積み重ねるようにつくられてきました。場所場所での空間は、様々な人たちが生きてきた時代の痕跡と、その生活を包んできた建築の蓄積とが複雑に絡み合っています。気候/地形/歴史/文化/芸術など、場所場所ごとの様々な要素は、一冊の本にみたてることができます。場所の名前や地名がタイトルとなった一冊の厚い書物です。この本の中に描かれている、様々な要素の間にある複雑な関係性が「コンテクスト=文脈」と呼ばれるものです。
 地球上にある場所はすべて、独自の「コンテクスト」を有しています。「コンテクスト」は場所特有の背景として、そこに建つ建築に大きな影響を及ぼします。建築は、「コンテクスト」を無視しては成り立ちません。古今東西の優れた建築物は、コンテクストを注意深く読みとり、これを活用し、その場所に密着しつつ、場所のもつ力と魅力を最大限に引き出すことに成功しています。
古代につくられた都市の基礎となり、後の時代に確実に受け継がれ、中世/ルネサンス/バロックといった時代ごとの華やかな建築物と都市空間が挿入され、今日見る美しい都市がつくられているのです。たとえば、水の都「ヴェネツィア」には、縦横無尽に運河のネットワークが張り巡らされています。人とモノは今でも運河によって運ばれ、「ヴェネツィア」の生活に不可欠な要素となっています。運河にかかる橋、細い路地、水辺の建築物は一体のものであり、水の上で全体が深く結びついています。
 内部空間の充実は当然のこと、その建築がつくられる場所の「コンテクスト」と調和し、その魅力を最大限に引き出すような建築デザインが考えられるべきです。









ヴェネツィア(画像)

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