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小堀將三

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小堀將三(こぼりしょうぞう) / マンション管理士

マンション管理士事務所JU

コラム

マンション管理に関する「質問主意書」の1件目

2020年6月28日 公開 / 2021年2月27日更新

テーマ:保険

コラムカテゴリ:住宅・建物

 通常国会が6月17日に閉会しましたが、無所属や小さな政党の国会議員は、口頭質問の時間が割り振りされなかったり、短い時間に限られてしまいますので、国会の会期中に、国政に関する質問書である「質問主意書」を所属する議員の議長を通じて内閣に送ることができます。質問主意書を受け取った内閣は、原則として7日以内に、文章で閣議を通して文章で回答します。
 今回の通常国会では、衆議院と参議院とで472件の質問主意書が提出され、その中にマンション管理に関する質問が2件ありました。
この2件の質問の内容は、私も、以前から疑問視しており、改善すべきだと考えていましたので、2回に分けて、そのままお知らせしたいと思います。

【マンション管理組合と個人賠償責任保険に関する質問主意書】
  提出者 阿久津幸彦(立憲民主党)

<質問>
一 マンション管理組合が、個人賠償責任保険を契約しているケースが散見されるが、マンション管理組合が、専有部分に関する契約である個人損害賠償保険を締結できる法令上の根拠はあるか、具体的に説明されたい。
二 一方、いわゆる区分所有法においてマンション管理組合は共用部分の管理を行うことを基本的任務としている。そして、その第十八条において「共用部分につき損害保険契約をすることは、共用部分の管理に関する事項とみなす。」と規定されている。すなわち、管理組合が契約の責務を負うのは共用部分に関する保険であると解すべきと考えるが、政府の見解を問う。
<一及び二の回答>
マンション管理組合(建物の区分所有等に関する法律(昭和三十七年法律第六十九号)第三条に規定する団体が、同法第四十七条第一項の規定による法人である場合にあっては当該法人をいい、同項の規定による法人でない場合にあっては同法第三条に規定する管理者を定めた当該団体をいう。以下同じ。)については、当該法人又は当該団体の管理者は同条に規定する建物並びにその敷地及び附属施設の管理を行うために必要な範囲で損害保険契約を締結することができると解されている。

<質問>
三 ところが、保険会社およびその代理店は、専有部分に関わる保険商品である個人賠償責任保険を事情を知らない管理組合に営業を行い、管理組合と契約している事例が見られる。政府はそれを把握しているか。
四 個人賠償責任保険は専有部分を所有する区分所有者の責任に関わる事故についてマンション内だけでなくマンション外で生じた保険事故もカバーしている。一方で、この保険がカバーするのは居住者だけである。管理費を払い、保険料も担っている「人に貸している区分所有者」はカバーされない。平成三十年十一月二十二日の参議院法務委員会において、マンション管理組合が個人賠償責任保険を区分所有法上契約できるかどうか小川敏夫参議院議員(現参議院副議長)が質問した。それに対し法務省民事局長は「建物あるいはその敷地等の管理とはおよそ無関係なものである場合には、管理組合のその権限に入ってこない」旨、一般論としてではあるが答弁している。
 現在、保険会社の個人賠償保険で「マンション内の行為に限ってそれをカバーする」保険はない。したがって、多くの管理組合を対象にして契約が行われている個人賠償責任保険は管理組合が必ずしも契約する必要のない保険商品であり、その事実を知らせることなく行われている同保険の契約はそもそも無効と考えるが政府の判断はどうか。
<三及び四の回答>
マンションの共用部分における火災や水濡れ、破損等の事故を補償するマンション管理組合に係る火災保険契約等については、共用部分において発生した事故の損害賠償責任が居住者にある場合に備えるなど、円滑なマンション管理に資する目的で、居住者等を対象とする個人賠償責任保険が特約として付帯される場合があると承知している。
 なお、保険契約の有効性については、関係法令等に基づき、個々の事案に応じて判断されるべきものと考えている。

<質問>
五 ちなみに管理組合が組合員から徴収する管理費によって町内会費を払っていた事例について「区分所有法の目的外の事項と解される」とした最高裁の判決があるが、それと同様の問題だとの認識はあるか。
<五の回答>
御指摘の「最高裁の判決」を特定できないため、お答えすることは困難である。

<質問>
六 昨今、築年数の古くなったマンションでは当然のように居住者の高齢化が進み、年金生活者が増えている。限られた管理費によってマンションが維持されているにもかかわらず本来契約する必要のない保険料の支払いで貴重なお金が失われている。全国のマンション管理組合で事情を知らず個人賠償責任保険を契約させられている事例とその契約金の総額を把握しているか。把握していないとすれば早急に保険会社に調査を指示するべきと考えるがどうか。
七 この問題は法律を所管し運用に責任を持っている政府が速やかに全保険会社に対し是正処置を講ずるよう指示するべきであると考えるがどうか。また、管理組合の錯誤により契約された過去の保険料は速やかに管理組合に返還されるべきものであると考えるがどうか。
<六及び七の回答>
保険会社及びその代理店におけるマンション管理組合への保険販売については、その実態を踏まえ、適切に対応してまいりたい。

 管理組合様が掛ける火災保険の特約の「個人賠償責任」については、保険会社の代理店、特に代理店になっている管理会社は、表面上の内容を少し説明されるだけです。この特約を付けることによって、本来区分所有者の事故責任で賠償すべきものを、管理組合様に肩代わりしてもらえるメリットがあります、というような内容説明がほとんどです。管理組合様が肩代わりすることには、様々なデメリットがあり、また問題が生じるおそれがあり、それを解消するためには相当な時間と労力を要します。そのうえで、管理組合様が合意されて契約なされるのでしたら構いませんが、そうでない場合が非常に多いと思われます。火災保険の見直し等の際には、是非、この特約の「個人賠償責任」の是非について議論していただきたいと思いますし、私がその際に立ち会わせていただいた時には、必ず助言させていただくつもりです。

 マンション管理に関する「質問主意書」の2件目

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