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中古マンションの売買契約における「売主の契約不適合責任」について

菊池捷男

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テーマ:企業法務の勘所

法諺「法は自ら助ける者を助く」の実例紹介」
中古マンションの売買契約における「売主の契約不適合責任」について

(1)根拠条文
民法562条1項主文は「(売買契約によって)引き渡された目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないものであるときは、買主は、売主に対し、目的物の修補、代替物の引渡し又は不足分の引渡しによる履行の追完を請求することができる。」と規定しています。

(2)責任の内容
この規定は「売主の契約不適合責任」と言われる規定です。
その責任の内容は、「履行の追完」だけでなく、563条以下で「契約の解除」をされたり「代金の減額」をさせられることもあります。

(3)旧法では「隠れた瑕疵担保責任」といわれたもの
改正前の民法債権法時代(2020年4月1日の前)では、この契約不適合責任は「隠れた瑕疵担保責任」と言われていました。

(4)マンションの意味と責任の範囲
マンションとは、一棟丸ごとでない場合は、
a 区分所有法でいう一棟の建物の中の特定の専有部分(例:301号室)の所有権(この所有権は「区分所有権」といわれます)
bその建物の共用部分の共有持分権(専有部分面積の合計を分母として買い受けた専有部分の面積を分子とする割合)
cその建物の敷地利用権
という三つの権利の束を言います。

専有部分は、個々の区分所有者権の権利の対象になりますので、その内容に契約に適合しない部分があると、売主には責任が生じます。
共用部分と敷地利用権は、区分所有法3条でいう団体とみなされる管理組合が管理するので、そこに旧法で言う瑕疵があっても区分所有者には責任は生じません。
なお、最高裁平成17年12月16日判決は、マンションの専有部分にある台所、洗面所、風呂、便所から出る汚水が階下の他の専有部分に漏出するものであっても、水漏れの原因になった配水管の修理が、当該専有部分の所有者では不可能な場合は、その配水管は共用部分に該当し当該専有部分の所有者には瑕疵(契約不適合)担保責任はないという法理をあきらかにしましたので、中古マンションの売主の責任はかなり限定されます。

(5)瑕疵担保責任と契約不適合責任の違い
「隠れた瑕疵担保」責任の有無とその責任の内容と効果は、裁判所が決めていたのが旧民法の制度です。
 ですから、自殺や犯罪死があったこと(これは心理的瑕疵」と言われたもの)が売買契約履行後に判明したときは、裁判所に、瑕疵があったと認められ、売主は売買金額の一定割合の損害賠償義務が生じるものされました。しかし、裁判所は売買契約の解除までは認めませんでした。

これに対し「契約不適合」責任の時代になりますと、その責任の有無と内容と効果は、売買契約当時者が契約の中で決めなければ効果は生じないことになりました。ですから、売買契約履行後にマンション内で自殺や犯罪死があったことがわかったときは、売買契約を解除しそれに伴う損害賠償の請求ができると規定しておれば売買契約の解除と損害賠償請求が認められますが、売買契約書に何も書かれていないときは、解除も損害賠償の請求も認められないことになります。

ですから、契約条項は、一義的明確性のある言葉で、かつ、具体的に書いておかなければ効力は認められませんので、要注意です。
要は、現在の民法は、“法は、自ら助ける者を助ける」時代になったということなのです。

具体例の1を紹介
ある宅建業者が使用している売買契約書ひな形の中の条文を紹介します。

(契約不適合による修補請求)
第**条 売主は、買主に対し、引き渡された建物の専有部分が次に該当する場合は、品質に関して契約の内容に適合しないもの(以下「契約不適合」という。)として、引渡し完了日から3か月以内に通知を受けたものにかぎり、契約不適合責任を負い、それ以外の建物の契約不適合および土地の契約不適合ならびに共用部分に原因がある不適合について、責任を負いません。
⑴給排水管の故障
⑵シロアリの害
2項以下は省略

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菊池捷男(弁護士)

弁護士法人菊池綜合法律事務所

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