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M&A 8 M&Aにはステークホルダーの目線も必要

菊池捷男

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テーマ:コーポレートガバナンス改革

8 M&Aにはステークホルダーの目線も必要

 2023年8月31日セブン&アイ・ホールディングスが、傘下のデパート「そごう・西武」を、アメリカ系投資ファンドに売却することを決定した(正しくは、2022年11月に結んだ譲渡契約を翌日の2023年9月1日に履行することを決めた)。その直後(2023年8月31日のこと)「そごう・西武」旗艦店である西武池袋本店の従業員がつくった労働組合がストライキに入った。
 それはファンド側が、デパートである西武池袋本店をデパートにしないかデパートの面積を狭くするかして家電量販店ヨドバシカメラを入店させる計画を持っていたことから、①従業員の身分に激変化が起こること、②その地域の文化の中心たるデパートがなくなる懸念が起きたことなどにより、従業員などステークホルダーが納得できなかったのが原因だったようである。
 その翌日の9月1日、セブン&アイ・ホールディングスはファンドとの契約を履行した、ファンドからは新しい経営人が、「そごう・西武」に入ってきた。ストライキは同日解除された。
このスト解除に至るまでの組合との水面下の交渉の姿は見えないが、ファンド側は労働組合との間で現在および将来にわたる何らかの保障の約束をしたものと思うが、その負担は事実上セブン&アイ・ホールディングスの負担になったものと思われる。

 それがどうであったのかはともかく、これからのM&Aは、このような事態もありうることを想定した上でなすべき教訓を与えたのではないだおうか。
要は、M&Aを見る目線は、株主目線だけでなく従業員などのステークホルダーの目線も必要になるということである。

 なお、アメリカにも同様の問題があるのか、日本経済新聞2023年8月12日付け「米M&A新指針案、労働者利益を重視」によれば、米連邦取引委員会(FTC)のリナ・カーン委員長は、企業のM&A(合併・買収)が反トラスト法(独占禁止法)に抵触しているか判断する際の新しい指針案として、合併後に労働者の立場が弱くなるケースには厳しい姿勢で臨む方針を鮮明にした旨を報じている。

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