M&A 1 M&Aの巧拙は企業の成長力に差を付ける
43.機関設計の比較論①監査役会設置会社と指名委員会等設置会社の違い
6月は、上場会社の定時株主総会が集中する月である。
その定時株主総会で、機関設計を、変更する会社が一定程度生ずると思われるので、ここで、改めて機関設計の比較をしておきたい。
1 監査役会設置会社と指名委員会等設置会社の違い
(1)「経営と監督の分離」ができているか
①監督の内容について
監査役会設置会社では、経営を監査する主体は、監査役会と監査役であるが、監査の内容は「違法性監査」に限られ、「妥当性監査」はできない。
これに対し、指名委員会等設置会社では、社外取締役が過半数を占める監査委員会は、「違法監査」も「妥当性監査」を可能である。
すなわち、監査の対象が前者は狭く後者は広いのである。
②権限の有無
監査役会設置会社の場合、監査役会にも監査役にも、
ⅰ)経営陣〈代表取締役〉を解職する権限はなく、
ⅱ)人事権(株主総会への取締役選任案の上程権限)もなく、
ⅲ)経営陣の報酬決定権限もない。
これに対し、指名委員会等設置会社の場合は、
ⅰ)社外取締役も入る取締役会に経営陣(執行役)を解職する権限があり、
ⅱ)指名委員会に人事権(株主総会への取締役選任案の上程権限)があり
ⅲ)報酬委員会に報酬決定権がある。
すなわち、前者の権限は小さくかつ弱いが、後者の権限は大きくかつ強いのである。
(2)社外取締役の設置の義務化
指名委員会等設置会社を導入した時、指名委員会等設置会社には社外取締役の設置を義務付けた。
その目的は、
①経営の監督者にするため
②上場会社を世界に通用する経営をさせるためのアドバイザーとして、
a) ESDsなど政策課題の遂行
b) 人材教育
c) 会社資産の有効な活用
などの面で。
これらの目的のため、我が国は、アメリカ法由来の指名委員会等設置会社を導入したのである。
外国資本の要求に応えるためだけでなく、我が国の産業競争力強化のために導入したのである。
しかし、我が国の上場会社には、指名委員会等設置会社は人気がない。
そこで、我が国は、妥協の産物か、指名委員会等設置会社に代えて、監査等委員会設置会社制度を導入することにした。
これは次回に解説する。