25 社外取締役を働かせる具体論 その2
41.監査の重要性は、ギボンに学ぶべし
エドワード・ギボンが著した「ローマ帝国衰亡史」(邦訳:PHP文庫)の中に、監察官制度の復活を称える一文がある。
すなわち、「厳正さゆえ国家安泰に大きく寄与していたこの職位は、諸皇帝が独占するところとなり、その後しだいに無視されるに至っていた」のであるが、西暦251年10月27日というこの日この時、元老院はウイリアヌスをこの職位に就かせた。
時は、ゴート族のローマ帝国への怒濤の進撃とローマ軍の壊滅的な敗北(皇帝親子までが戦死するほどのもの)というローマ帝国滅亡の危機に陥った時のことである。
このような中、元老院は、監察官制度の重要性を思いだし、ウイリアヌスを監察官に就けたのである。
これにより、その後、ローマはゴート族を退けることに成功した。
ギボンは、この成功は、監察官ウイリアヌスに、
➀民の声に耳を傾ける態度と、
②正義のために闘う不屈の執念という徳操があったればこそ、と評価した。
なお、この時に監察官になったウイリアヌスは、その後、皇帝に推戴された。
ここから、データねつ造の連鎖が止まない我が国の上場会社の経営トップに対し、
a)厳正な監査の必要性を認識しているか?
b)経営陣は、監査をする者(監査役・監査委員・監査等委員)を、自家薬籠中の物(経営トップの意を迎えることに汲々とした人物)としてはいないか?
が問われることになる。
一方監査をする者に対しては、
a)民の声、すなわち、株主その他のステークホルダー、要は世論の声に耳を傾ける姿勢があるか?
b)会社や正義のため闘う不屈の執念という徳操があるか?
c)上場会社の監査委員という名誉と、少なくない監査報酬に縛られ、魂を売るなどはしていないか?
が問われることになる。
上場会社の経営陣は、我が身に対し、「監査は、その厳正さゆえに会社の健全で持続的な成長には大いに寄与することの認識はしていたが、経営する側になると無視してきた」のではないかと、問うてみるべきであろう。