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21 「執行役」と「いわゆる執行役員」との違い

菊池捷男

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テーマ:コーポレートガバナンス改革

21 「執行役」と「いわゆる執行役員」との違い

(1) 執行役
「執行役」は、機関設計を指名委員会等設置会社にした会社に置かれる役員である。
すなわち、会社法402条は1項で「指名委員会等設置会社には、1人又は2人以上の執行役を置かなければならない。」と定めているからである。
ちなみに、同条2項には、「執行役は、取締役会の決議によって選任する。」とされ、403条は1項で、「執行役は、いつでも、取締役会の決議によって解任することができる。」と規定されている。


(2)「執行役員」という肩書の起源
 「執行役員」という肩書は、1997年ソニーの中で生まれたと言われている。
 日本の企業は、年功序列型社会。
平社員に始まり、主任・係長・課長・次長・部長と出世コースを走り抜き、その最高峰が取締役、という出世コースが多い世界であったようだ(多くの会社では今も)。
 しかし、それをしてきた結果、ソニーでは取締役の数が100名前後になったようだ。
ソニーとしては、永年勤続の褒賞として従業員に与えたポストではあっても、その者が取締役である以上は取締役会に出席させねばならず、その結果、取締役会の時間がいたずらに長引き、迅速な意思決定が困難になるなどの弊害が生じたらしく、そのため「取締役」ではない肩書が必要となって「執行役員」という肩書をつくったというもの。
 その真偽の程は定かではないが、あり得る話ではあろう。

なお、このとき、ソニーが付けた「執行役員」という呼称は、取締役でない者、つまりは従業員に付けたものであった。
取締役にではない。
ちなみに、辞書・広辞苑によれば、「執行役員」の意味は「企業の業務執行と経営の分離の見地から、業務執行部門の責任者などに付す肩書き。執行役とは異なり、法律上の名称ではない。」と書かれている。

(3)「執行役員」は、従業員にも取締役にも付けている会社の事例もあり、混乱が予想されること
ある東証プライム市場上場の会社の株主総会招集通知書に書かれた取締役選任案に、複数の候補者の氏名と属性と会社における地位、それに取締役在任年数が書かれていた。
その中のA氏には、
属性は「新任」、会社における現在の地位は「常務執行役員」、取締役在任年数「 -(ゼロの意味)」 と書かれていたが、
B氏については、
属性は「再任」、会社における現在の地位は「取締役常務執行役員」、取締役在任年数7年と書かれていた。

この会社は、従業員にも「執行役員」という肩書を付け、取締役にも「執行役員」という肩書を付けているのであるが、いったい、この会社は「執行役員」の定義をどう付けいるのか?
また、そのポストの順位は?など、
株主も、ステークホルダーも、困惑するのではないか。


 

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菊池捷男
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菊池捷男(弁護士)

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