第2章 パワハラ防止体制の構築
1.危険な条項多し
2019年(令和元年)5月17日付けの日本経済新聞に、最近、契約書の中に相手方企業がチェックしきれないような抜け穴条項を設け、相手方企業の技術を合法的に奪う事例も出てきた、との記事が書かれていた。
The law helps those who help themselves.(法は、自ら助くる者を助く)のであるから、企業の法務担当者は、蛇の如く賢くなければならない。
その賢く対処する一例を紹介したい。
2.録画録音を!
新たな取引を始める場合、通例、取引内容を詰めていく会話が先行するはずだ。
そして合意に達した時は契約書の作成ということになるが、その契約書の内容が確定した時は、それまでになされた会話の内容を要約してこれを質疑応答式に整理した上で、録画録音することを勧めたい。
それをすると、その過程で更なる質問事項も出てくるので、それについても質疑応答がなされること必定となり、結果的には、より内容の濃い契約書ができること請け負いだ。
これができると、トラブル発生の危険性は激減するであろう。
3.法を知った者か弁護士にも参加させること
録画録音をするための質疑応答は、①契約内容を履行する、あるいは相手方企業のする契約の履行を監視する立場の社員のほかに、②法を知っている者にさせる必要がある。法を知っている者としては、弁護士もその候補者に挙げるべきである。
弁護士が、契約交渉段階から立ち会う慣習は、外資系の会社に多いが、我が国の企業法務にも、積極的にそのような慣習を作り上げる必要があると思う。
重要な契約、金額が張る契約、新規の取引先との最初の契約などでは特にそうだ。
弁護士は、多くの訴訟事件を扱ってきているので、紛争の原因となるところ、その解決指針の立て方など、他の人と比べて、一日の長がある。
だから、弁護士の活用は、極めて有効だと考えるのである。