言葉12 箴言(しんげん)
ロータリーは、Togetherという言葉を大切にしています。ではTogetherあるところ、何が起こるのか? 私は、奇(き)蹟(せき)が起こった例を歴史の中に見た思いがします。
それは、ウィンストン・チャーチルの回顧録『第二次世界大戦』に書かれた食事会でのことです。ウィンストン・チャーチルは、陸海空三軍の首(しゅ)脳(のう)を連れて、ソ連へ行き、スターリンらと対ナチスドイツ戦について討議しました。1941年のことです。
この年、ドイツは、英国に対する空襲を中止し、突如、独ソ不可侵条約を犯してソ連に侵攻し、独ソ戦争(以後4年間でソ連兵が1470万人、ドイツ兵が390万人もの死者を出すほどの激しい戦争)を始めたのです。チャーチルらイギリスの首脳とスターリンらソ連の首脳間の討議は、ソ連からイギリスに対し、ドイツの兵力の半分を引き付けるため西(せい)部(ぶ)戦(せん)線(せん)をつくってくれという要求についてでした。しかし、イギリスはナチスドイツに本国を空襲され気(き)息(そく)奄(えん)々(えん)の中、第二戦線をつくることなど到底できるような戦況ではありませんでした。しかし、ソ連は納得せず、三日三晩、激論を交わした後、会談は決(けつ)裂(れつ)しました。
しかしこの直後、翌日イギリスに帰るというチャーチルら一行に対しソ連から食事会の誘いがあり、その食事会を開いた結果、「イギリスは第二戦線を設けないが、イギリスからソ連へ、アメリカから送られる軍(ぐん)需(じゅ)物(ぶっ)資(し)と兵器の多くをアメリカの同意を得て送る」という協定が成立しました。まさに奇蹟が起きたのです。
チャーチルの回顧録には、そのあたりのことについては、簡単に、食事会は、時に、そのような雰囲気を作り出すものだとしか書かれていませんが、私が思うに、食事会は、人と人が胸(きょう)襟(きん)を開いて語り合う機会になることから、お互い肝(かん)胆(たん)相(あい)照(て)らす関係が生まれ、ソ連側、イギリス側とも、お互いの事情を心(しん)底(そこ)から理解でき、妥協ができたのではないかと思います。
ですから、食事会は、胸襟を開いて語り合い、肝胆相照らす関係をつくりますので、そのような機会をつくる親(しん)睦(ぼく)、そこから生まれる“Together”は大切にしたいものです。