言葉 13 七歩の詩
「プラスの言葉」という用語は、その昔、NHKの名アナウンサーであった故・高橋圭三が、講演の中で語った言葉です。高橋元アナは、卑近(ひきん)な例として、道行く途中で、若い女性に会ったとする。そのとき、“あっ。きれいな人だなあ。”とつぶやく。このつぶやきが一つのプラスの言葉だというのです。
高橋元アナの説明では、このつぶやきを聞いた女性は、たいへん喜び、その心の効果は最低三日間続く。そのような効果のある言葉、それがプラスの言葉なのだというのです。
たしかに、言葉は、寸鉄人を刺すごとく、短くとも人の死命を制するほどの力を持つ場合もあれば、眼前の人の目を輝(かがや)かせ、自信を持たせ、希望・意欲を燃え立たせるほどの、力を持つ場合もあります。
そう考えると、言葉は、努めてプラスの言葉を使うべきでしょう。
プラスの言葉の対極(たいきょく)にあるのがマイナスの言葉です。
“ 酔ってクダまく、父(とと)さの声を、逃げて飛びだしゃ、吹雪(ふぶき)の夜道、辛(つら)い気持ちは分かっちゃいるが、おいらばかりに、ああ、なぜ当たる。”
これは、歌手であった故・三橋美智也のヒット曲の歌詞です。
昔は、経済生活の苦しさから、酔ってクダまく父(とと)さもいましたが、今は、別の理由で酔ってクダまく父さもいるようです。
ある離婚事件のことです。夫は、立派な公務員。しかし、この夫、酔ってクダまく癖(へき)があり、ついに妻から離縁状(離婚届書)を突きつけられ、離婚させられた男性です。妻の言い分だと、夫の、毒ガスをまき散らすような他人の悪口、“もうやめてくれ!”という叫び声を上げさせるような妻への執拗(しつよう)な非難。それが離婚理由だというのです。
プラスの言葉を使いましょう。
まずは、家庭で。妻に、夫に、子に、親に。そして、職場で。そして、あらゆる人間関係の中で。
お金がかからず、幸福になる妙薬(みょうやく)。それがプラスの言葉だからです。