2021/01/07 寄附の文化と寄附金額の増大
2021/04/23 東芝とガバナンス問題
昨日の続きを書く。
1.東芝は、コーポレートガバナンスの先駆者といわれたこともあった
上場会社の機関設計は、2003年まで全社、監査役会設置会社であった。しかし、2003年からアメリカ法由来の委員会設置会社(現在の指名委員会等設置会社)制度が導入され、東芝はすぐにこれを採用した。
このことにより、当時、東芝はコーポレート・ガバナンス(企業統治)の先駆者といわれた。
2.では、指名委員会等設置会社にすれば、ガバナンスがよくなるのか?
指名委員会等設置会社になれば、取締役は原則として業務執行(経営)をしない。経営は専ら取締役会によって選任された執行役(Officer)が行い、取締役は取締役会の構成員として、執行役の業務の執行を監督する役柄だ。
したがって、これが徹底されれば、指名委員会等設置会社はガバナンスのよく効いた会社になりうる可能性は高いが、実際は、取締役が執行役を兼務することができるのであるから、この業務執行と監督の分離は徹底しているとは言いがたい。東芝の場合もそうであった。
なお、現在、上場会社のうち、指名委員会等設置会社になった会社は、3%前後しかいない。指名委員会等設置会社は、制度はよいが、これを採用する会社の少なさは、どう説明すべきであろうか。
3.東芝のガバナンス不在
その1は、WHの実体すなわち、原発をつくった経験が30年以上もなく、技術者が離職して原発建設のシミュレーションすらまともにできない状態の会社であったにもかかわらず、WHの買収金額が他の買収競争者の3倍以上の高額であることに疑義を唱える声が、社内外の取締役から出たとは聞いていないこと、その2は、パソコン事業の毎四半期決算で、売上高を超える営業利益を計上するという異常な数字が出ているのに、これを問題にする者がいなかったこと(汪志平「東芝の不正会計と日本の企業統治改革の課題」産研論集50 7頁)からも十分推測されることである。