2020/08/29 公共イメージオンラインセミナー
2021/03/10 渋沢栄一には、叱られる理由はなかった
昨日の日記の続きである。
昨日の日記には、渋沢栄一が、伊藤博文から「他人の悪口を言ってはいけない!」と言われて叱られたことを書いた。
しかし、この叱責は、経済を知らない伊藤博文の方の間違いであったと思われる。
それは、「青淵百話」に書かれている、その叱責前後の文章から、私が推測したことだ。
すなわち、当時、三菱財閥を興した岩崎弥太郎は、運送事業に関し、今なら独禁法や不正競争防止法に違反する行為をして、同業他社を圧迫していた。そのため圧迫された同業者の間に、三菱の専横を政治の力で押さえてもらおうという気運が起こり、その橋渡しを渋沢栄一に頼んだ。そこで、渋沢栄一は、伊藤博文に会って、岩崎弥太郎のした行為の詳細な内容を報告した。
これが伊藤博文から誤解された「他人の悪口」ではなかったかということだ。
なお、渋沢栄一は、フランスに行き、資本主義の根幹である株式会社の制度を学んだというだけでなく、自由主義と自由競争の理念も身に付けていたはずだ。その観点から、岩崎弥太郎の行為を見逃すことはできないと考えたのであろう。
しかし、伊藤博文には、株式会社の制度の理解はなく、私的独占や不正行為を禁止すべきものとの理解はなかったであろう(それを禁ずる法律すらない当時の政治家ならやむをえないことだが)。その認識の違いから、伊藤博文は渋沢栄一の訴えを「他人の悪口を言う」と即断したものと思われる。
であるから、渋沢栄一は、決して他人の悪口を言ったものではない。