2020/08/13 千古の名文が生まれた瞬間
2021/03/09 渋沢栄一が叱られた理由は、他人の悪口を言うな!である
次に書く文章は、渋沢栄一が語り、かつ校正した著「青淵百話」に書かれている文章である(出典は、「現代語訳 渋沢栄一自伝(平凡社新書0628)である。なお、渋沢栄一を知るには、この新書は実に優れている。
内容は、渋沢栄一があるとき伊藤博文より叱られたときの理由である。それによって渋沢栄一が学んだ教訓である。
(前略)・・・ところが伊藤公は、私の話には一言も口を挟まず、こちらが言いたいことをすっかり言い終わったと見るや、やがて居住まいを正し、「渋沢君はどうも奇妙なことを言われる。自分の良いことを言うのはまず許せるとしても、それを証拠立てるために他人の悪事を数え上げるというのは、士君子の与(くみ)しないところではないか。実に卑怯なやり方だ。こういうことはお互いに慎みたいものである。特に君などは実業界から立派な人物だと見なされているし、また、おそらく君自身もそう思っているに違いない。そういう君からしてこんなことを言うようでは困るではないか。」と忠告された。私はこの言葉を聞いたときには、ほとんど穴へでも入りたいくらいに思い、顔を上げることができなかった。・・・(中略)・・・後になって思いめぐらせば、伊藤公のこのときの忠言は、私が精神修養にあたって最も力のある一言であったと、今もなお深く感謝している。・・・
私など、この言葉を、拳々服膺すべきものと思っている。