2020/09/02 智頭ロータリークラブ公式訪問記
2021/01/09 2021年を占う 5 企業法務が進化する
1.ハードロー & ソフトロー
ハードローとは、裁判で履行を強制したり罰を科すことのできる「法律」をいい、ソフトローとは、法律による強制や処罰はできないが、自主的に履行が期待される、権威ある機関の「推奨」をいう。
会社について例を挙げれば、「会社法」がハードローであり、金融庁と東京証券取引所が協同でつくった「コーポレートガバナンス・コード」がソフトローである。
2.comply or explain
この言葉は、ソフトローについて用いられる言葉だ。コーポレートガバナンス・コードの場合で言うと、金融庁と東京証券取引所は、上場会社に対し、コーポレートガバナンス・コードを遵守(comply)するか、しないのなら遵守しない理由を説明せよ(explain)と迫ることができるのだ。
こうなると、事実上上場会社はコーポレートガバナンス・コードを遵守せざるを得ないことになる。
もしコーポレートガバナンス・コードを遵守しない会社がいたら、会社名の公表などを通して、外国人投資家からダイベストメント(divestment・投資忌避)の対象にされるだけでなく、取締役の解任動議を出されるなどの憂き目を見るだろう。
だから、ソフトローもバカにはできないのだ。
3,コーポレートガバナンス・コードに書かれたことは、次のステップでは、国内法上の義務になる
2019年12月4日に会社法が改正され、大会社(資本金5億円以上または負債200億円以上の会社)は、社外取締役を置くことが義務になった。
実は、上場会社に社会取締役を置くことは、コーポレートガバナンス・コードが強く推奨してきたことだ。
このように、コーポレートガバナンス・コードに書かれて上場会社に対し推奨する内容は、後年、法律化されると理解すべきことなのだ。
4.判例は役に立たない 契約内容の充実化こそが重要
会社と会社の取引で、争いが生じ、その解決ができなく、裁判に発展する事態になるのは、最悪だと思うこと。
今、会社は、裁判をするなど非生産的なことに、時間やお金ををかけるべきではないからである。
では、裁判を避けるにはどうすればよいかというと、契約内容を充実させることだ。
契約当事者間で予想される紛争を洗い出し、それらの紛争が顕在化したとき、どう解決するかが具体的な金額をもって書かれた契約がよい。
判例は役に立たない。判例は、例えば、「損害が生じた場合は損害賠償をする」などと極めて漠然とした内容の契約書などで、裁判所が、時間をかけ、証拠を吟味して、その事件では、「損害」とはカクカクのものと解される、とか、その事件では、賠償の対象はカクカクのものまでだという、裁判所の規範的な考えをいうものだからだ。
判例を待たず、損害とは何か?賠償の対象はどこまでか?が、契約書上で一義的明確性を持って書かれておれば、判例を求める必要はない。
つまり、裁判をせずして、解決指針は明確にできているからだ。
5.会社内の法務部の充実化
会社内の法務部は、片々たる条文の解釈や、判例の収集という仕事だけでは不十分だ。
それをする閑があれば、例えば、一義的明確性をもった言葉でもって契約書の内容を充実させることの方が大切だ。
場合によっては、立法府に働きかけて法律をつくってもらうくらいの実力を養うことだ。アメリカの企業がしているようにだ。
6.2021年は企業法務が進化する
私の予感だ。