2020/07/27 「訊く」と「聞く」と聴く」と「きく」
2020/07/10 識字率の向上が必要なのは、日本人も同じだ
ロータリーの奉仕の重要な対象とするものの中に、「基本的教育と識字率の向上」がある。
識字率の向上というと、発展途上国の問題のように思われがちだが、この問題は、私たち日本人にも突きつけられた課題と考えるべきである。
日本人の場合、目に一丁字もないという人は少ないと思うが、識字力すなわち国語力を誇れる国民かどうかは別問題である。
その問題点の一は、「漢字の使い方」にある。
日本語の場合、漢字が有意文字であることを考えて、正しく使う必要があるのだ。
例えば、店を「あける」という場合、「開ける」と書けば、顧客がわんさと来て商売繁盛が期待できるが、店を「空ける」と書くと、来るのは閑古鳥だけ。やがては、“売り家”と唐様に書く三代目になってしまう。
このように漢字の使い方を間違えると、意味はまったく違ってくるのである。
ロータリーでも、ガバナーを「選出」したというべきところを、ガバナーを「輩出」したというなど、ロータリアンらしくない、漢字の誤用も散見する。
問題点の二は、漢字の読みの間違いがあることだ。
「上意下達」の「下達」の読み方を間違える人が意外に多いように思うが、これは下達の対象者が、下僚であるので、「かたつ」と読む、と覚えるとよいであろう。
問題点の三は、漢字と仮名の使い分けの基準である。
漢字が有意文字であり、その意味を訴求したいと思うところでは漢字で書き、漢字固有の意味が発揮できないところや漢字の意味を訴求する必要のないところでは仮名で書く、というのが基準であり法則だ。
新聞に載ったことのある、平成天皇の終戦記念日でのお言葉の中に、「深い反省とともに」という文節と、「全国民と共に」という文節があった。
漢字で書くのは、その固有の意味を強く訴えたいときであるから、平成天皇(現上皇)陛下が「全国民と共に」と書かれたのは、天皇は常に国民と共にいること(together)を強調されたのだと思われる。漢字と仮名の使い分けには、繊細なものがあるのだ。
問題点の四は、語彙の質と量である。
哲学者ニーチェは、「持ち合わせの言葉が貧しければ、表現も貧しくなり、考えや感情を的確に伝えることはできない。言葉の質と量が豊かなものなら、考えや表現も豊かなものになる」というほど、語彙は大切である。
問題点の五は、言葉の彫啄(研磨すること)である。
映画「ウインストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男」には、チャーチルが国会(下院)でする演説の原稿を彫啄し続ける姿が描かれている。
言葉を磨き続けたチャーチルは、「私は光り出すまで言葉を磨いた」という言葉を残しているほど、言葉を磨いたのである。
なお、彫啄という語は、本来、宝石を磨く意味で作られた言葉であるが、言葉を推敲して推敲して、さらに推敲して磨く意味にも使われる言葉になったとのことだ。チャーチルは、のちに随想録「第二次世界大戦」を書き、ノーベル文学賞を授与されたが、納得できることだ。
なお、ウインストン・チャーチルのノーベル文学賞受章の理由は、著書「第二次世界大戦(回顧録)」に見られる、歴史的で伝記的な文章で見せた卓越した描写と、高邁な人間の価値を擁護する卓越した雄弁術、というものであった。
【言葉の意味】
目に一丁字もない → 文盲のこと