遺言執行者観に関する謬説がなくなるまで①
6.日米の経営トップの年収に差が出る理由
菊池:しかし、ねえ。日経2019/6/25によれば、米国のCEOの役員報酬は、日本の社長の約11倍であることが報じられているが、米国の上場会社はすべて指名委会社であるようだし、そうなると、指名委会社であることが、この年収の差を生んだ原因の一つとはいえないだろうかねえ?
後藤:ボクも同じ思いを抱いたことがあるよ。それは、もうずいぶん前だが、アメリカの某社のCEOの年俸が200億円を超えていた記事を見たときだ。この当時、日本では、世界的に有名な大企業の社長でも年俸は1億円程度だったのでね。たしかに、指名委会社において、取締役や執行役の報酬を、株主の意思を聴かずに、報酬委員会だけが決めることに、疑念は残るねえ。
菊池:ねえ、後藤くん、現在、指名委会社は何社くらいできているのだい?江頭さんの「株式会社法」第7版には、ずいぶん少ないような書き方がなされていたけどねえ。
後藤;東証一部上場会社2150社のうち、指名委会社は57社だけだよ(日本取締役協会調べ2019年5月7日付)。だから、非常に少ない。言い換えれば、人気のない種類の会社だよ。
菊池:指名委会社が、そんなに採用されない理由はなんだい?
後藤:ボクの感想を言わせてもらうと、三委員会の設置が義務付けられる負担のほかに、ボクたち日本人には、特定少数の取締役だけで、取締役と執行役の報酬を決めるなどの、文化に馴染めないからだと思うよ。日本人は皆で決めて、皆で分け合う、というのが、日本の文化だと思うのでね。