一字違えば意味違う (相続放棄と相続分の放棄)
その2 貢献には財で報うべし(寄与分加算や特別寄与料)
具体的相続分という言葉は、特別受益の持戻計算をする場合のほか、寄与分のある相続人がいる場合も、使われる。
要は、被相続人の財産の形成や維持に寄与した相続人があるとか、被相続人を療養看護して被相続人の財産を少なくさせなかったという相続人がいる場合、遺産額の中から、寄与分として一定の金額を控除し、残りの遺産の額を、相続人全員に平等に割りふった後、寄与分のある相続人には、寄与分として別に遺した金額を加算するという方法で、具体的相続分を算出するのだ。
要は、貢献には、財で報うべしというのが法律の考えなんだよ(民法904条の2)。
なお、この具体的相続分という言葉は、次の判例に見られるように、最高裁判所も使っているんだ。
参照:最高裁判所大法廷平成平成28年12月19日決定
・・・遺産分割審判・・・の手続において基準となる相続分は,特別受益等を考慮して定められる具体的相続分である(同法903条(注:特別受益者がいる場合の規定)から904条の2(注:寄与相続人がいる場合の規定)参照)。
なお、平成30年7月6日の相続法(正しくは「民法第5編 相続」)の改正で、特別寄与制度が創設された(民法1050条)。これは、夫を亡くした妻が、夫の親の療養看護をしても、子がなくと祖父母の相続人となる者が身近にいない場合は、祖父母が亡くなったとき、遺産は一切与えられないという、法の非常を埋めるために創設されたのである。
この制度も、貢献には財で報うべしの法の思想がみられるところである。