2 指定相続分
2 遺言執行者
遺言執行者制度は、被相続人の持つ遺言権を制度的に保障した制度です。
本書では、解説の便宜上、これを第1款 遺言執行者の委託者 第2款 遺言執行者の権限と効果、第3款 遺言執行者に関するその他 に分けて解説いたします。
平成30年の改正では、遺言執行者の権限と効果に関し、重大な改正をしております。
第1款遺言執行者の委託者
【条文】
(遺言執行者の指定)
第1006条 遺言者は、遺言で、一人又は数人の遺言執行者を指定し、又はその指定を第三者に委託することができる。
2 遺言執行者の指定の委託を受けた者は、遅滞なく、その指定をして、これを相続人に通知しなければならない。
3 遺言執行者の指定の委託を受けた者がその委託を辞そうとするときは、遅滞なくその旨を相続人に通知しなければならない。
(遺言執行者の任務の開始)
第1007条 遺言執行者が就職を承諾したときは、直ちにその任務を行わなければならない。
2 遺言執行者は、その任務を開始したときは、遅滞なく、遺言の内容を相続人に通知しなければならない。
(遺言執行者に対する就職の催告)
第1008条 相続人その他の利害関係人は、遺言執行者に対し、相当の期間を定めて、その期間内に就職を承諾するかどうかを確答すべき旨の催告をすることができる。この場合において、遺言執行者が、その期間内に相続人に対して確答をしないときは、就職を承諾したものとみなす。
(遺言執行者の欠格事由)
第1009条 未成年者及び破産者は、遺言執行者となることができない。
(遺言執行者の選任)
第1010条 遺言執行者がないとき、又はなくなったときは、家庭裁判所は、利害関係人の請求によって、これを選任することができる。
【解説」
第1006条は、遺言執行者は遺言者が指定する、あるいは遺言執行者の指定を第三者に委託することができることを定めた規定です。
しかしながら、遺言執行者として指定された者に、遺言執行者就職の義務があるわけでもないところから、相続人又は利害関係人(受遺者など)から、遺言執行者に指定された者に対し、就職をするかしないかを催告するなどの制度を設けています(1008)。
遺言執行者がいない場合は、利害関係人からの請求で、家庭裁判所が遺言執行者を選任することになります(1010)。
利害関係人とは、遺言書の内容に直接利害関係を有する者のことですので、受遺者などが考えられます。
これにより明らかなとおり、遺言執行者は、遺言者の意思で指定する場合(1006)か、利害関係人(受遺者)の請求で裁判所が選任する場合(1010)かのいずれかの場合に、就職することになります。