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4 預貯金と遺産分割

菊池捷男

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テーマ:令和時代の相続法

4 預貯金と遺産分割

 預貯金債権は、遺産分割の対象になる不可分債権だとする判例が出ました。
 それまでは、預貯金債権は可分債権であるので、遺産分割の対象にはならないという判例(下記①)があったのですが、下記②の判例によって①判例が変更されたのです。
なお、判例変更をするには大法廷でしなければならないことになっていますので、大法廷でなされています。

【判例①】
昭和29年4月8日最高裁第一小法廷判決
相続人数人ある場合において、その相続財産中に金銭その他の可分債権あるときは、その債権は法律上当然分割され各共同相続人がその相続分に応じて権利を承継するものと解するを相当とする。

【判例②】
 最高裁判所大法廷平成平成28年12月19日決定
・・・普通預金契約及び通常貯金契約は,・・・口座に入金が行われるたびに・・・口座の既存の預貯金債権と合算され,・・・1個の債権として同一性を保持しながら,常にその残高が変動し得るものである。・・・
以上のような各種預貯金債権の内容及び性質をみると,共同相続された普通預金債権,通常貯金債権及び定期貯金債権は,いずれも,相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはなく,遺産分割の対象となるものと解するのが相当である。

【解説】
過去の金融機関の運用を
 昭和29年の最高裁判決があっても、多くの金融機関は、この判例に従わず、相続預金の払戻請求には、全相続人の同意が必要であるという運用をしてきました。
 このような実態もあってか、平成28年の最高裁判決は、必要性があるという実際的理由と、預金は口座が一つなので可分債権ではないという理論的理由によって、預金債権を遺産分割の対象になる不可分債権としたものです。

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菊池捷男(弁護士)

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