被後見人の遺言の制限
2 代襲相続人
代襲相続人とは、本来の相続人が、ある理由(代襲原因事由)で相続人になれなかった場合に、その子が親の地位を襲って相続人になるという制度です。
代襲相続は、相続人の第一順位者である子と、第三順位者である兄弟姉妹の場合に認められています。子の代襲相続人は、被相続人からみると孫、兄弟姉妹の代襲相続人は被相続人からみると甥・姪になります。
再代襲という制度もあります。これは、第一順位の子についてだけですが、子に代襲原因があって相続人にはなれなかった上に、その子(被相続人からみて孫)にも代襲原因があるため相続人になれないという場合は、子の子の子、つまりは被相続人からみてひ孫が相続人になります。
【相続人調査のときの留意点】
なお、相続人の第三順位者である兄弟姉妹については、法は、再代襲までは認めていません。
実は、昭和55年に改正されるまでの相続法では、兄弟姉妹が相続人になる場合も、再代襲を認めていましたが、その年の改正で、相続人の範囲をいたずらに広げるべきではないとの反省から、昭和56年1月1日以後開始する相続については、甥や姪の子の再代襲は認められなくなったのです。
ですから、不動産の名義人から現在の相続人を調査する場合、この事実を見落とすと、相続人調査が失敗に帰す場合なしとはいえません。注意が必要なところです。
【根拠条文の解説】
1)子の代襲相続(887②)と再代襲相続(887③)の根拠条文
第887条
2 被相続人の子が、相続の開始以前に死亡したとき、又は第891条の規定(注:相続人欠格事由)に該当し、若しくは廃除によって、その相続権を失ったときは、その者の子がこれを代襲して相続人となる。ただし、被相続人の直系卑属でない者は、この限りでない。
3 前項の規定は、代襲者が、相続の開始以前に死亡し、又は第891条の規定に該当し、若しくは廃除によって、その代襲相続権を失った場合について準用する。
2)兄弟姉妹の代襲相続の根拠規定
第889条
2 ・・・前項第2号の場合について準用する(子が相続人になる場合の代襲相続規定。なお、再代襲の規定である887条3項は準用されていないことに注意)。
まとめ
代襲原因
①子が相続の開始以前に死亡していたとき。
②子に相続欠格事由があるとき。
③子が廃除によって相続権を失ったとき。
このうち②の相続人欠格事由は第891条に規定があります。
第891条 次に掲げる者は、相続人となることができない。
ⅰ 故意に被相続人又は相続について先順位若しくは同順位にある者を死亡するに至らせ、又は至らせようとしたために、刑に処せられた者
ⅱ 被相続人の殺害されたことを知って、これを告発せず、又は告訴しなかった者。ただし、その者に是非の弁別がないとき、又は殺害者が自己の配偶者若しくは直系血族であったときは、この限りでない。
ⅲ 詐欺又は強迫によって、被相続人が相続に関する遺言をし、撤回し、取り消し、又は変更することを妨げた者
ⅳ 詐欺又は強迫によって、被相続人に相続に関する遺言をさせ、撤回させ、取り消させ、又は変更させた者
ⅴ 相続に関する被相続人の遺言書を偽造し、変造し、破棄し、又は隠匿した者
③の廃除の要件に関しては第892条が定めています。
第892条 遺留分を有する推定相続人(相続が開始した場合に相続人となるべき者をいう。以下同じ。)が、被相続人に対して虐待をし、若しくはこれに重大な侮辱を加えたとき、又は推定相続人にその他の著しい非行があったときは、被相続人は、その推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求することができる。
なお、相続放棄は、代襲原因ではないことに注意が必要です。