祭祀の主宰者の指定基準
1 意思能力がなくなった者は、法律行為はできない
意思能力を喪失した人は、法律行為をすることはできません。
銀行預金の払戻請求をすることもできません。
家族の者が、本人の印鑑、通帳をもって、銀行に行っても、最近は、銀行も本人の意思確認をしますので、容易に払戻しには応じてくれません。
2 できるのは後見人だけ
意思能力をなくした人のために法律行為ができるのは、代理人である後見人だけです。後見人には、法定後見人と任意後見人があります。
3 法定後見人を選任してもらった場合のデメリット
法定後見人は、家庭裁判所が選任します。
誰を法定後見人に選任するかは、裁判所が判断しますので、家族が法定後見人になれる保障はありません。
裁判所が家族以外の者を法定後見人に選任した場合は、次のようなデメリットが生じます。
① 本人や家族の生活費は、法定後見人が決めること
なお、このデメリットというのは、次の例話を考えて、考えついたものです。
(架空の例)
妻が、今、夫から毎月100万円の生活費を渡され、夫と妻だけの生活費として使っている。
100万円は、無論、夫や子や孫への小遣いにも、友人との交際費にも、使っているが、それだけ与えられてきた妻は、安定した、また、安心した生活ができている。
このようなところに、突然夫に認知症の症状が出、自宅での世話が十分にできなくなったことから、夫を施設に入所させたが、その直後、子の一人からの申立てで、夫に成年後見人が付いた。
法定後見人は、裁判所が家族以外の者(弁護士や司法書士や社会福祉士など)から選任した。
法定後見人は、自分の金銭感覚で、妻への生活費は月30万円で十分だと考え、その金額しか渡さなくなった。
夫の生活費は、法定後見人から施設に支払うことになったので、妻へ渡す30万円は、妻だけが生活するのは十分だと考えたのである。
その結果、妻は、親しい友人に、“いま、私は、豪邸の中での極貧生活を余儀なくされている”と泣いて訴えるようになった。
② 毎月、一定額の報酬を、本人が亡くなるまで支払続ける必要がある
家族でない者が法定後見人に選任された場合、その法定後見人が、裁判所の決める報酬を、本人が亡くなるまで、本人の預金の中から払戻しを受け、自己の収入とすることになります。
月額最低2万円から5万円程度ですが、決して少ない金額ではありません。
4 任意後見契約を結んだ場合のメリット
本人が、意思能力のある間に、特定の者(家族でもよい)との間に、本人が意思能力をなくしたときに後見人にすると契約を結んだ場合は、その者が任意後見人になります。権限は、法定後見人の権限とは違って、本人が結ぶ任意後見契約の中に定めることになります。
ですから、
①任意後見契約で、夫が意思能力を欠いた後の妻へ渡す生活費を毎月100万円と定めておけば、任意後見人は、本人の妻に対し、毎月100万円を支払う義務が生じます。
② 任意後見人への報酬も、契約で決められます。
任意後見人を子の一人にしたときは、報酬をゼロとする契約も可能です。
このような任意後見契約を結んでおくと、本人や家族(特に妻)が、豪邸の中での極貧生活に泣くようなことは起こらないでしょう。