相続 相続分の指定によって遺留分が侵害された場合の最高裁判例
1 遺留分減殺請求は財産ごとに共有状態をつくる権利
遺留分減殺請求をすると、対象になった財産ごとに共有になります。
例えば、甲から乙に対し、遺留分減殺請求をした場合で、遺留分減殺割合が1/4、対象になった財産が、土地、有価証券、預金2口だとしますと、遺留分減殺請求の結果は、土地は甲が1/4、乙が3/4、有価証券も甲が1/4で乙が3/4、預金2口も、それぞれ甲が1/4、乙が3/4の共有状態になります。
これでは、たいへん不便です。
そこで、次の制度が用意されています。
2 価額賠償制度
民法1041条は「受贈者及び受遺者は、減殺を受けるべき限度において、贈与又は遺贈の目的の価額を遺留分権利者に弁償して返還の義務を免れることができる。」と規定していますので、遺留分減殺請求を受けた側は、現金の支払い(価額弁償)ですませたいと思う財産については、金銭の支払いをすれば、財産(共有持分)を遺留分権利者に与える必要はありません(最高裁第三小法廷平成12年7月11日判決)。
3 遺留分権利者には価額弁償請求権はない
この価額弁償制度は、遺留分権利者のための制度ではないため、遺留分権利者からは、価額弁償を請求することはできません(名古屋高裁平成6.1.27判決、東京高裁昭和60.9.26判決)。
この点、遺留分権利者からも価額弁償請求ができるとの誤解が多くあります。
4 遺留分権利者から、特定の財産に絞った遺留分減殺請求も認められていません。