第3章 1概説 5公正証書遺言の作り方
【補説】
1 可分債権が遺産分割の対象にならない理由
金銭債権などの可分債権は、金額で表示されますので、分割が可能です。ここから、金銭債権は、可分債権といわれるようになりました。
ところで、金銭債権である可分債権のうち貸金債権や損害賠償請求権は、債務者の資力その他で、実質価値は定かでないため、遺産分割の対象にできません。そこで、相続人全員が法定相続分又は指定相続分に分割されで相続されたものと考え、個々の相続人が直接、自分の相続分について請求できるようにしています。
2 預貯金は、可分債権ではないので、遺産分割の対象になる
ところが、預貯金は、額面どおりの評価額があると考えてよいので、遺産分割の対象にしても、問題はありません。それどころか、預貯金を遺産分割の対象にすると、遺産分割で分ける遺産の価額の差額を調整する調整金として使うメリットがあり、便利です。このような実質的価値があることから、最高裁判所大法廷平成28年12月19日決定は、従来の判例を変更して、預貯金は可分債権ではないと判示しました。
これは実質的な理由ですが、法理論としては、預貯金は、金額に目を留めると分割可能にみえても、口座は一つだから可分ではない、という論になっています。。