間違えやすい法令用語4 許可・特許・認可・免許
1 忠実義務
会社法355条は、「取締役は、法令及び定款並びに株主総会の決議を遵守し、株式会社のため忠実にその職務を行わなければならない。」という義務を定めています。これは「取締役の忠実義務」といわれますが、忠実義務はアメリカ法から来た概念で、具体的には、利益相反行為の禁止と競業避止義務(同356条)等をいう概念(言葉)です。
2 善管注意義務
会社法上、取締役は民法の委任に関する規定が適用され(会社法330条)ますが、民法644条は、委任を受けた者は「善良な管理者の注意をもって、委任事務を処理する義務を負う」と定められており、これは「善管注意義務」といわれます。
善管注意義務はドイツ法から来た概念であり、アメリカ法から来た忠実義務とは、淵源が異なります。
3 収斂
以前は、忠実義務と善管中義務はどう違うのかにつき、議論がありましたが、現在は、忠実義務は善管中義務の一内容と捉えることができるので、取締役の義務は善管注意義務に収斂されると考えられており、これは判例になっている、というのが、広島大学で長年会社法の教授をしてきた後藤紀一弁護士の言です。