9 手付解除はいつまでならできる?
1 隠れた瑕疵がある場合の売主の責任
民法では,売買の目的物に「隠れた瑕疵」があったときは,売主は瑕疵担保責任を負うと定められています(民法570条,566条)。
ここで「隠れた」とは,買主が取引上一般に要求される程度の注意をしても発見できないようなものをいい,
また、「瑕疵」とは,その物が通常有すべき客観的性質・性能の欠如,契約上予定した性質の欠如をいいます。
2 宅地の瑕疵の定義
札幌地裁平成17年4月22日判決は,
宅地の売買において,地中に土以外の異物が存在すること自体が,直ちに土地の『瑕疵』を構成するものでない。
しかし,その土地上に建物を建築するにあたり支障となる質・量の異物が地中に存するために,その土地の外見から通常予測され得る地盤の整備・改良の程度を超える特別の異物除去工事等を必要とする場合には,宅地として通常有すべき性状を備えないものとして土地の「瑕疵」になるというべきである。
と判示していますが,これが一般的な「宅地の瑕疵」の考えです。
3 瑕疵担保責任免除特約の対象になる瑕疵と、対象にならない瑕疵
前記札幌地裁判決の事件において,裁判所は,以下の①から⑤の事情から,この件の売買契約での免責約款の対象になる瑕疵は,④に限定されると判示し,売買契約時には想定していなかった地中埋蔵物については、瑕疵担保免責約款の効果を受けることはなく、売主から買主に対し、それらの撤去費用を支払うよう命じています。
① 売買契約の対象になった土地がガソリンスタンドとして使用されていた土地であること
② 売主は,本件土地の地中埋設物が撤去済みであると回答していたこと
③ 地中埋設物の存在を前提に,本件売買契約の代金を減額するなどの話合いをしたことはないこと
④ 買主は,売買契約の締結の際,本件土地西側の境界線に,本件埋設物の一部が露出していることを認識していたこと
⑤ 訴訟で,買主は,売買契約における瑕疵担保責任免除特約は,④のことを指していると主張していること
結論として,売買契約の際に想定されていなかった瑕疵は,瑕疵担保免責約款の対象にはならないというのが,この札幌地裁判決の趣旨ですし、一般的な瑕疵担保免責約款の効果の範囲です。