賃貸借契約と転貸借契約はリンクするか?
1、サブリース契約とは?
判例(最高裁平成15年10月23日判決)によれば、
「不動産賃貸業等を営む会社である甲が,土地所有者である乙の建築したビルにおいて転貸事業を行うことを目的とし,乙に対し一定期間の賃料保証を約し,乙において,この賃料保証等を前提とする収支予測の下に多額の銀行融資を受けてビルを建築した上で締結された」建物賃貸借契約は、「いわゆるサブリース契約と称されるものの一つ」である、とされています。
別の判例(最高裁平成15年10月21日判決)は、「本件契約は,不動産賃貸等を目的とする会社である甲が,乙の建築した建物で転貸事業を行うために締結したものであり,あらかじめ,乙と甲との間で賃貸期間,当初賃料及び賃料の改定等についての協議を調え,乙が,その協議の結果を前提とした収支予測の下に,建築資金として甲から***億円の敷金の預託を受けて,乙の所有する土地上に本件建物を建築することを内容とするものであり,いわゆるサブリース契約と称されるものの一つであると認められる。」と判示していますので、
判例は、不動産賃貸業者が、建物の所有者から、転貸目的で建物を賃借する形態をサブリース契約の本質的な要素と考えているようです。
2 サブリース契約に、家賃保証条項や自動増額条項がある場合でも、家賃減額請求ができるか?
最高裁平成15年10月23日判決は、
「本件契約には,借地借家法が適用され,同法32条の規定も適用されるものというべきである。
本件契約には本件賃料自動増額特約が存するが,借地借家法32条1項の規定は,強行法規であって,本件賃料自動増額特約によってもその適用を排除することができないものであるから,本件契約の当事者は,本件賃料自動増額特約が存するとしても,そのことにより直ちに上記規定に基づく賃料増減額請求権の行使が妨げられるものではない。」と判示して家賃減額請求ができると判示しました。
ただし、同判決は、「本件契約は,甲の転貸事業の一部を構成するものであり,本件契約における賃料額及び本件賃料自動増額特約等に係る約定は,乙が甲の転貸事業のために多額の資本を投下する前提となったものであって,本件契約における重要な要素であったということができる。これらの事情は,本件契約の当事者が,前記の当初賃料額を決定する際の重要な要素となった事情であるから,衡平の見地に照らし,借地借家法32条1項の規定に基づく賃料減額請求の当否(同項所定の賃料増減額請求権行使の要件充足の有無)及び相当賃料額を判断する場合に,重要な事情として十分に考慮されるべきである。」と判示し、建物の所有者が、一方的に不利になることはないような配慮をすることを暗に求めております。
3 家賃減額を求める時期
最高裁平成15年10月23日判決は、「借地借家法32条1項の規定に基づく賃料増減額請求権は,賃貸借契約に基づく建物の使用収益が開始された後において,賃料の額が,同項所定の経済事情の変動等により,又は近傍同種の建物の賃料の額に比較して不相当となったときに,将来に向かって賃料額の増減を求めるものと解されるから,賃貸借契約の当事者は,契約に基づく使用収益の開始前に,上記規定に基づいて当初賃料の額の増減を求めることはできないものと解すべきである。」と判示し、建物の使用収益開始前には、家賃の減額請求はできないと判示しました。