不動産 オフィスビルの場合は,通常損耗の原状回復義務があるのか?
Q 11年前に購入した土地についてお尋ねいします。このたびその土地上に建物を建てようとして,土地を掘削したところ,廃材が出てきました。
⑴ これは瑕疵になるのですか?
⑵ 瑕疵になるのであれば,瑕疵担保責任を追及しての損害賠償の請求はできますか?
⑶ それができない場合の,損害賠償請求の可否
A
⑴について,
札幌地裁平成17年4月22日判決は,「本件土地のような宅地の売買において,地中に土以外の異物が存在する場合一般が,直ちに土地の『「瑕疵』を構成するものでないことはいうまでもない。しかし,その土地上に建物を建築するにあたり支障となる質・量の異物が地中に存するために,その土地の外見から通常予測され得る地盤の整備・改良の程度を超える特別の異物除去工事等を必要とする場合には,宅地として通常有すべき性状を備えないものとして土地の『瑕疵』になるというべきである。」と判示していますが,あなたの場合,この基準に該当する場合は,瑕疵になります。
⑵について
瑕疵があれば,廃材など「特別の異物除去工事費用等」の損害賠償請求権が発生しますが,債権の消滅時効期間が経過しておれば,消滅しています。
すなわち,最高裁平成13年11月27日判決は,「買主の売主に対する瑕疵担保による損害賠償請求権は,売買契約に基づき法律上生ずる金銭支払請求権であって,これが民法167条1項にいう「債権」に当たることは明らかである。この損害賠償請求権については,買主が事実を知った日から1年という除斥期間の定めがあるが(同法570条,566条3項),これは法律関係の早期安定のために買主が権利を行使すべき期間を特に限定したものであるから,この除斥期間の定めがあることをもって,瑕疵担保による損害賠償請求権につき同法167条1項の適用が排除されると解することはできない。さらに,買主が売買の目的物の引渡しを受けた後であれば,遅くとも通常の消滅時効期間の満了までの間に瑕疵を発見して損害賠償請求権を行使することを買主に期待しても不合理でないと解されるのに対し,瑕疵担保による損害賠償請求権に消滅時効の規定の適用がないとすると,買主が瑕疵に気付かない限り,買主の権利が永久に存続することになるが,これは売主に過大な負担を課するものであって,適当といえない。したがって,瑕疵担保による損害賠償請求権には消滅時効の規定の適用があり,この消滅時効は,買主が売買の目的物の引渡しを受けた時から進行すると解するのが相当である。本件においては,被上告人が上告人に対し瑕疵担保による損害賠償を請求したのが本件宅地の引渡しを受けた日から21年余りを経過した後であったというのであるから,被上告人の損害賠償請求権については消滅時効期間が経過しているというべきである。」と判示し,売買対象物の引渡しを受けた時から時効期間が経過すると,損害賠償請求権は消滅するものと判示しております。
あなたの場合は,瑕疵があったとしても,瑕疵担保責任に基づく損害賠償請求権は時効により消滅しているものと思われます。
⑶ 要件を満たしておれば,不法行為による損害賠償請求は可能
すなわち,あなたが土地を購入したときの売主が,地中埋設物のあることについて知っていたか,過失によって知らなかった場合は,民法709条の「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。」という規定により,損害賠償義務を負いますが,この不法行為責任は,民法724条で,「不法行為による損害賠償の請求権は、被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から3年間行使しないときは、時効によって消滅する。不法行為の時から20年を経過したときも、同様とする。」と規定していますので,引渡から最長20年間は行使できる可能性がありますので,不法行為が成立し,民法724条の要件を満たしておれば,まだ損害賠償請求権は消滅していないことになります。