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消滅時効が完成したと判断されることを条件とする相殺の主張も,反訴では可能

菊池捷男

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テーマ:民法雑学

最高裁判所第一小法廷平成27年12月14日判決は,
金融業者に対して過払金があるとして,その返還請求訴訟(本訴)を起こした者が,金融業者から,その債権は消滅時効が完成しているという主張(抗弁)がなされ,しかも,別口の貸金請求の反訴を起こされた場合,その別口の債権の請求(反訴請求)に対し,本訴に係る過払返還請求権が時効消滅したと判断されるとき,その債権を自働債権として,金融業者が有する別口の貸金請求権と対当額で相殺をすることはできると判示しました。

すなわち,同判決は,
 「係属中の別訴において訴訟物となっている債権を自働債権として他の訴訟において相殺の抗弁を主張することは,重複起訴を禁じた民訴法142条の趣旨に反し,許されない(最高裁平成3年12月17日第三小法廷判決)。
 しかし,本訴において訴訟物となっている債権の全部又は一部が時効により消滅したと判断されることを条件として,反訴において,当該債権のうち時効により消滅した部分を自働債権として相殺の抗弁を主張することは許されると解するのが相当である。その理由は,次のとおりである。
 時効により消滅し,履行の請求ができなくなった債権であっても,その消滅以前に相殺に適するようになっていた場合には,これを自働債権として相殺をすることができるところ,本訴において訴訟物となっている債権の全部又は一部が時効により消滅したと判断される場合には,その判断を前提に,同時に審判される反訴において,当該債権のうち時効により消滅した部分を自働債権とする相殺の抗弁につき判断をしても,当該債権の存否に係る本訴における判断と矛盾抵触することはなく,審理が重複することもない。したがって,反訴において上記相殺の抗弁を主張することは,重複起訴を禁じた民訴法142条の趣旨に反するものとはいえない。このように解することは,民法508条が,時効により消滅した債権であっても,一定の場合にはこれを自働債権として相殺をすることができるとして,公平の見地から当事者の相殺に対する期待を保護することとした趣旨にもかなうものである。」と判示したのです。

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菊池捷男(弁護士)

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