法令用語 「ないし」や「乃至」は使わず,「から・・・まで」を使う。
「法令における漢字使用等について」は,活用のない語で慣用が固定していると認められる語は,送り仮名を付けないものと定め,例として,多くの語を挙げています。
その中に,「手当」(読みは「てあて」)と「雇止手当」(読みは「やといどめてあて」という語があります。
しかしながら,これらの語の語根である「当」の正しい字訓は「あ」であって,「あて」ではありません。
「雇」の字訓は「やと」であって「やとい」ではありません。
また,「止」の字訓は「と」であって「とい」ではありません。
ですから,これらの語を常用漢字表の書き方に従って書くと「手当て」と「雇い止め手当て」になるはずですが,法令用語としては,前述のように,「手当」,「雇止手当」と書き,送り仮名を付けないものとしているのです。
参照①
「法令における漢字使用等について」2送り仮名の付け方について (2)複合の語
イ 活用のない語で慣用が固定していると認められる次の例に示すような語については,「送り仮名の付け方」の本文の通則7により, 送り仮名を付けない。
【例】・・・手当・・・雇止手当
参照➁
「常用漢字表」
当(富) トウ
あたる 当たる 当たり
あてる 当てる 当て
雇 コウ 雇用,雇員,解雇
やとう 雇う,日雇い
止 シ 止宿,静止,中止
とまる 止まる,行き止まり
とめる 止める,歯止め
このような送り仮名を付けない語は,法令において使われる語に限られます。ですから,法令に書かれない語は,「常用漢字表」に従って送り仮名を付けなければなりません。
前述の法令に書かれる「手当」というは,給与や報酬のことですから,その意味の「てあて」は「手当」と書きますが,それ以外の「てあて」,例えば怪我の「てあて」という場合は「手当て」と書くことになるのです。
その他にも,種々の語が,法令用語になる場合は送り仮名を付けず,そうでない場合は,本来の送り仮名を付ける,ということになります。
例えば,法令では「受付係」の「係」は送り仮名を付けませんが,それ以外の使い方として「熟語への係りがおかしい」)と書く場合の「係り」は送り仮名を付けることになります。
「手引」も,法令用語として書く場合は「手引」ですが,それ以外の用語(例えば,「手引きをする」)と書く場合は,送り仮名を付けます。
「日付」も送り仮名を付けませんが,法令に書かれることのない「平成・・年・・月・・日付け売買契約」という場合は「付け」と書きます。
このように,法令において使う語の場合は,結構,送り仮名が省かれていますが,これらは固定した慣用があるからです。
公用文に書く漢字についても同じで,固定した慣習により,多くの語が,送り仮名を付けないこととされています。
これら固定した慣用により送り仮名を付けないものとされた語は,「公用文における漢字使用等について」や「法令における漢字使用等について」にほぼ網羅的に搭載されていますので,漢字を書く場合で送り仮名を付けるか付けないか迷うとき,これらを見るとよいと思います。