人も,後継者も,いつまでも,呉下の阿蒙にあらざるなり
1 相続時精算課税贈与
相続時精算課税贈与とは,贈与時には一応贈与税を課すが(ただし,基礎控除額を2500万円,それを超える分については一律20%の贈与税を課すことで,贈与税は低く抑えられています。),贈与者につき相続が開始した時に,相続税を課し,すでに納めた贈与税は精算され,贈与税の方が多い場合は差額を還付する,という制度における贈与のことをいいます。
2 メリット
(1)贈与をしやすくすること
この制度を選択しますと,贈与税がかからないか(2500万円の基礎控除額内の場合),かかっても低い税率にすることで贈与をしやすくする効果があります。
父母や祖父母から,子や孫に,資産の移転を容易にする効果があるのです。
(2)将来資産価値が上昇する物を贈与する場合に,節税効果があること
相続時精算課税贈与の対象になる財産の課税標準額は,贈与税のみならず,相続税の場合も,贈与時の評価額になりますので,贈与後値上がりが確実と思える財産を贈与すると,相続税節税の効果が生じます。自社株が将来大きく値上がりすると思うような場合,この制度を選択するとよいでしょう。もっとも,この点は,暦年贈与を選択した場合も同じですが。
3 デメリット
いったん相続時精算課税贈与を選択しますと,その選択に係る贈与者から贈与を受ける財産については、その選択をした年分以降全てこの制度が適用され、暦年課税へ変更することはできなくなります。
(注1) 相続時精算課税に係る贈与税額を計算する際には、暦年課税の基礎控除額110万円を控除することはできませんので、贈与を受けた財産が110万円以下であっても贈与税の申告をする必要があります。
(注2)相続時精算課税を選択した受贈者が、相続時精算課税に係る贈与者以外の者から贈与を受けた財産については、その贈与者についても相続時精算課税贈与適用を選択する場合を除いて,暦年贈与になります。
4 要件
(1)贈与者要件
贈与者は贈与をした年の1月1日において60歳以上の父母又は祖父母
(2)受贈者要件
受贈者は贈与を受けた年の1月1日において20歳以上の者のうち、贈与者の推定相続人である子又は孫
(3)適用対象財産等
贈与財産の種類、金額、贈与回数に制限はありません。
5 事業承継の効果は少ない
相続時精算課税贈与は,贈与財産が相続税の課税対象になることから,事業承継の上での相続税の節税効果は期待できません。将来値上がりが期待できる自社株式を,相続時精算課税贈与の対象にする場合は,2の(2)のメリットが期待できるというにとどまります。