相続税のお話し 7 代償分割に潜む落とし穴
A氏,生前贈与と動産については,紛争の予防ができたと,すっかり安心し,子供の間で不公平な財産の配分にならない手当ができたと喜ばれたところで,
私から,
Q
ところで,奥様へのご配慮は?
と訊くと,A氏,
A
無論,妻には,たいへん苦労をかけたから,別に,今後,遺言書の中で,妻が困らないだけの財産を相続させるつもりですと,言われたので,私から,
Q
自宅をまだ奥様に生前贈与されていないのなら,相続税対策にもなり,奥様も喜ばれると思われますので,そうせられては?
と勧めました。
ここで,
【夫婦の間で居住用の不動産を贈与したときの配偶者控除】の特例制度を説明しますと,
1 特例の概要
婚姻期間が20年以上の夫婦の間で、居住用不動産又は居住用不動産を取得するための金銭の贈与が行われた場合、基礎控除110万円のほかに最高2,000万円まで控除(配偶者控除)できるという特例です。
2 特例を受けるための適用要件
(1) 夫婦の婚姻期間が20年を過ぎた後に贈与が行われたこと
(2) 配偶者から贈与された財産が、自分が住むための国内の居住用不動産であること又は居住用不動産を取得するための金銭であること
(3) 贈与を受けた年の翌年3月15日までに、贈与により取得した国内の居住用不動産又は贈与を受けた金銭で取得した国内の居住用不動産に、贈与を受けた者が現実に住んでおり、その後も引き続き住む見込みであること
(注) 配偶者控除は同じ配偶者からの贈与については一生に一度しか適用を受けることができません。
3 土地家屋の評価の方法
土地家屋の評価は,東日本大震災により被害を受けた財産の相続税又は贈与税における評価方法は,別になりますが,それ以外は,
(1) 土地
土地の評価方法には、路線価方式又は倍率方式のいずれかになります。
イ 路線価方式
路線価方式は、路線価が定められている地域の評価方法です。路線価とは、路線(道路)に面する標準的な宅地の1平方メートル当たりの価額のことで、千円単位で表示しています。路線価方式における土地の価額は、路線価をその土地の形状等に応じた奥行価格補正率などの各種補正率で補正した後に、その土地の面積を乗じて計算します。
ロ 倍率方式
倍率方式は、路線価が定められていない地域の評価方法です。倍率方式における土地の価額は、その土地の固定資産税評価額(都税事務所、市区役所又は町村役場で確認できます。)に一定の倍率を乗じて計算します。
路線価図及び評価倍率表並びにそれぞれの見方は、国税庁ホームページで閲覧できます。
(2) 家屋
固定資産税評価額に1.0倍して評価します。
したがって、その評価額は固定資産税評価額と同じです。
(これらも国税庁のホームページからの抜粋記事です。)
という制度ですので,要は,自宅の土地建物の相続税評価額が2110万円までならば贈与税がかからず,それを超える金額に相続税が課せられることになりますが,幸いA氏の場合は贈与税がかからない計算になりました。