行政 2 たかが勧告と言うなかれ(行政指導でも取消訴訟の対象になる場合)
自治体が加入している保険会社から支払われる保険金で賄われる損害賠償額でも,示談を結んで支払う限りは,議会の議決事項になるのか?
Q 当市の職員が軽微な物損事故を起こしましたが,保険会社が,被害者と示談を結ぶと賠償金は全額保険会社が支払うといってくれていますので,示談を結ぼうと思います。
その場合,議会の議決が要るのですか?
A
「示談」は,地方自治法96条12号の「和解」に含まれます。「新版逐条地方自治法第4次改訂版」松本英昭著 339頁によれば,「和解」とは,民法695条の規定による民事上の和解,民事訴訟法89条の訴訟上の和解及び同法275条の訴訟提起前の和解,これら全てを含むと解されているのです。
ですから,職員による職務中の自動車事故の損害賠償に関する示談は法96条12号に規定する,地方公共団体を当事者とする和解に該当することになりますし,示談で損害賠償額を定めることは,「法律上その義務に属する損害賠償額を定めること」(法96条1項13号)に該当します。
そのため,職員による職務中の自動車事故の損害賠償に関する示談は,例え軽微なものであっても,議会の議決事項となります。
ただし,地方自治法180条の議会の委任による専決事項の規定によって,軽微な物損事故で,その賠償金が保険会社から支払われ,実質的に自治体の債務ともいえないような支払については,市町村長の専決事項とする措置をとっている場合は,それによることができます。
この場合は,議会へは,事後報告ですませることができます(参照:地方財務実務提要213頁)