(補説) 固定資産税等が高いと思ったときの争い方
1 意味
建築条件特約の付いた土地売買契約とは,買主が売主の指定した建築会社に,建物を建築させることを条件にした,土地の売買契約のことをいいます。そして,その特約とは,①一定の期間内に,買主は売主が指定した建築会社との間に建物建築請負契約を結ぶこと,➁もし,建物建築請負契約が結ばれなかった場合は,土地売買契約は解除され、売主は買主に対し,手付金を全額返還すること,の2つになります。
2 このような契約は有効か?
独禁法上の抱き合わせ販売とされるときは,無効とされる場合もありますが,不動産の表示に関する公正競争規約第6条1号ウ(平成15年1月14日公正取引委員会告示第2号・最終変更:平成25年4月25日)に定める広告,すなわち,「建築条件が成就しない場合においては、土地売買契約は、解除され、かつ、土地購入者から受領した金銭は、名目のいかんにかかわらず、すべて遅滞なく返還する旨」の広告,すなわち,前記特約の➁の部分が広告されておれば,有効です。
3 買主が,自分が欲する土地を買えたことで満足し,肝心の建物建築請負契約は結ばず,知らん顔,は許されるのか?
この場合は,土地売買契約は解除されたことになりますので,買主は土地を取得できず,売主は買主に対し手付金全額を返還しなければなりません。
4 もし,建築条件付き土地売買契約書に,前記➁の特約が書かれていなかった場合でも,売主は,買主に手付金を返還する義務があるのか?
名古屋高等裁判所平成15年2月5日判決は,公正競争規約第6条1号ウに定める「広告文言は,独占禁止法に抵触しないために顧客を保護する重要な意義を有するものであり,本件土地売買契約の契約書に明記されていないとしても,本件土地売買契約の契約内容となっているとみるべきである」との理由で,契約書の中に前記①の特約だけが書かれているだけで,前記➁の特約事項が書かれていない場合でも,土地売買契約の条件である,建物建築請負契約が結ばれなかった場合は,土地売買契約は解除され,売主は買主に対し,手付金全額の返還義務がある,と判示していますので,この場合も,売主は買主に対し,手付金全額を返還しなければなりません。
5 建築条件に違反した買主に対し,違約金の請求はできないか?
できません。これができるとされたときは,建築条件付き土地売買契約は,抱き合わせ販売として,違法性を帯びることになるからです(前記名古屋高裁判決参照)。