30 意外や意外,決済の障害になる,土地の境界明示条項
否です。
有害物質は自然由来のものも多く,要は,自然界に存在しているため土中にあっても不思議ではないことなので,有害物質が土中にあることだけでは土地の瑕疵にはなりません。 しかしながら,土壌汚染対策法2条1項および土壌汚染対策法施行令1条に指定された,カドミウムおよびその化合物等25種類の物質(法律上は「特定有害物質」といいます。)については,これら法令で定める溶出量基準値及び含有量基準値を超えて存在しておれば,土地の瑕疵になるというのが判例です。
1 瑕疵とされる理由について
東京地裁平成18.9.5判決は、法令で定める「各基準は、一定の科学的根拠から、土壌汚染による人の健康に係る被害の防止に関する措置を実施する上で目安になるものとして規定されているものと考えられるところ、同各基準を超える含有量ないし溶出量が検出された場合には、その程度の如何を問わず、当該土地の汚染土により人が直接被害を受け、また、同土地を雨水等が透過した際に地下水を汚染する蓋然性が認められるというべきである。さらに、そのような蓋然性を前提とすれば、汚染土地の利用方法は、おのずから制限されるのであり、汚染の生じていない土地に比して経済的効用は当然低下する。また、汚染の生じていない土地と同様の効用ないし交換価値を獲得しようとすれば、土壌の浄化等の措置が必要となるのであり、買主はそのための費用支出を強いられることになる」から瑕疵になるとしています。
2 そこで問題です。現時点特では,特定有害物質なのだが,その指定がなされる前でも瑕疵になるのか?
まずは,東京高裁平成20.9.25判決は言います。
「土地の土壌に人の生命、身体、健康を損なう危険のある有害物質が上記の危険がないと認められる限度を超えて含まれていないことは、・・・土地が通常備えるべき品質、性能に当たるというべきである。したがって、・・・売買契約締結当時は取引上相当な注意を払っても発見することができず、その後・・・限度を超えて含まれていたことが判明した場合には、目的物である土地における有害物質の存在は民法570条にいう隠れた瑕疵に当たる」と。
しかしながら,最高裁平成22.6.1判決は、前記東京高裁判決を破棄して,
「売買契約の当事者間において目的物がどのような品質・性能を有することが予定されていたかについては,売買契約締結当時の取引観念をしんしゃくして判断すべきところ,・・・・・本件売買契約締結当時,取引観念上,ふっ素が土壌に含まれることに起因して人の健康に係る被害を生ずるおそれがあるとは認識されておらず,被上告人の担当者もそのような認識を有していなかったのであり,ふっ素が,それが土壌に含まれることに起因して人の健康に係る被害を生ずるおそれがあるなどの有害物質として,法令に基づく規制の対象となったのは,本件売買契約締結後であったというのである。・・・そうすると・・・本件土地の土壌に溶出量基準値及び含有量基準値のいずれをも超えるふっ素が含まれていたとしても,そのことは,民法570条にいう瑕疵には当たらないというべきである。」と判示して、売買契約当時特定有害物質とされていなかったものは、その後特定有害物質として指定されたとしても、瑕疵にならないとされたのです。