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4 仮登記だけでは時効にかかる

菊池捷男

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テーマ:不動産法(売買編まとめ)

  バブル時代を思い出します。札束で顔を張るようにして,大金を出し,市街化調整区域内の農地のまとめ買いをしていた人物がいたっけ。その農地を,その地域が市街化区域になれば,転売することで大もうけしようとの考えでいたようですよ。でも,・・・・・
 市街化調整区域内の農地を,宅地に転用し,それを分譲する目的で,農地法第5条の転用許可が得らることを条件に,売買契約を結び、代金を全額支払い,買主の権利を保全する目的で所有権移転の仮登記を経由しているという取引は,現在でもみられる取引形態ですが,不動産業者の場合は5年間(一般消費者の場合で10年。ただし,民法改正後は5年間)で,この買主の権利である,買主の売主に対する農地法5条の許可申請協力請求権は、時効で消滅してしまいます。



  最高裁昭和50年4月11日判決は,「右許可申請協力請求権は、許可により初めて移転する農地所有権に基づく物権的請求権ではなく、また所有権に基づく登記請求権に随伴する権利でもなく、売買契約に基づく債権的請求権であり、民法167条1項の債権にあたると解すべきであって、右請求権は売買契約成立の日から10年(筆者注:商取引による場合は5年。商取引でない場合も、民法改正後は5年)の経過により時効によって消滅する。」と判示しているからです。

 要は,市街化調整区域が,線引きの見直しにより,市街化区域に変更になるのを,気長く待つという姿勢で,同地域内の農地を買い,仮登記を経ていても,時効でその権利が消滅すると,何もならないということです。

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菊池捷男(弁護士)

弁護士法人菊池綜合法律事務所

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