不動産の相続をする場合と,遺贈を受ける場合では,税金が違うの?
Q 遺産分割をやり直すと、贈与税や譲渡所得課税がありなの?
A
1 遺産分割の合意解除の場合
遺産分割協議が成立すると,それにより遺産の帰属が決まってしまいますので,その後遺産分割協議を合意解除すると,その後の権利の移動は,遺産分割とはみられません。その結果、贈与税がかかってきたり、譲渡所得課税問題が生じますので,要注意です。
2 遺産分割が無効の場合
最初の遺産分割が無効な場合は,初めから遺産分割はなかったことになりますので、改めてする遺産分割は、分割後の再分割ではなく、贈与税や譲渡所得課税はありません。
国税通則法23条2項は、当初の遺産分割による贈与税の「申告・・に係る課税標準等又は税額等の計算の基礎となつた事実に関する訴えについての判決(判決と同一の効力を有する和解その他の行為を含む。)により、その事実が当該計算の基礎としたところと異なることが確定したとき」は、「確定した日の翌日から起算して2月以内」に更正の請求ができる、と規定していますので、判決による場合だけでなく、判決と同一の効力を有する和解や調停によって、遺産分割が無効とされた場合は、その後に改めてする遺産分割については、贈与税や譲渡所得課税はないことになります。
ところでです。もし、この国税通則法の規定を悪用する者が現れ、実は、無効ではない遺産分割を無効な遺産分割であるとして、なれ合い訴訟をしたり、和解をして、遺産分割を無効であることにし、やり直し分割をして贈与税や譲渡所得課税問題を避けようとしたら、うまくいくのでしょうか?
実は、税務署は、このような不逞の輩がいるとの前提で、遺産分割の無効をいう者に厳重な注意を払っています。
和解が判決と同一の効力があるといっても、訴えの提起前の和解(いわゆる即決和解)は和解とは見てくれません。判決であっても、なれ合い訴訟によるものと疑えるものは、遺産分割を無効とは見てくれません。
法律の規定は前述の通りですが、こと税金に関しては、税務署は、ひ、じょう~に、厳しいものがあります。ご用心、ご用心。