地方行政 4 行政財産の目的外使用許可から賃貸借契約締結へ
最高裁判所平成18年10月26日判決は,
①普通地方公共団体の締結する契約については,その経費が住民の税金で賄われること等にかんがみ,機会均等の理念に最も適合して公正であり,かつ,価格の有利性を確保し得るという観点から,一般競争入札の方法によるべきことを原則とし,それ以外の方法を例外的なものとして位置付けているものと解することができる(地方自治法234条1項,2項及び地方自治法施行令167条)。
➁公共工事の入札等について,入札の過程の透明性が確保されること,入札に参加しようとする者の間の公正な競争が促進されること等によりその適正化が図られなければならない(公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律3条)。また,指名競争入札の参加者の資格についての公表や参加者を指名する場合の基準を定めたときの基準の公表を義務付けていることから,普通地方公共団体が締結する公共工事等の契約に関する入札につき,機会均等,公正性,透明性,経済性(価格の有利性)を確保することを図ろうとしているものということができる。
③甲 村においては,従前から,公共工事の指名競争入札につき,村内業者では対応できない工事についてのみ村外業者を指名し,それ以外は村内業者のみを指名するという運用が行われていたが,確かに,地方公共団体が,指名競争入札に参加させようとする者を指名するに当たり,〔1〕工事現場等への距離が近く現場に関する知識等を有していることから契約の確実な履行が期待できることや,〔2〕地元の経済の活性化にも寄与することなどを考慮し,地元企業を優先する指名を行うことについては,その合理性を肯定することができるものの,〔1〕又は〔2〕の観点からは村内業者と同様の条件を満たす村外業者もあり得るのであり,価格の有利性確保(競争性の低下防止)の観点を考慮すれば,考慮すべき他の諸事情にかかわらず,およそ村内業者では対応できない工事以外の工事は村内業者のみを指名するという運用について,常に合理性があり裁量権の範囲内であるということはできない。
④甲 村では,資格審査要綱において村内業者と村外業者とが定義上区別されているものの,その運用は,村内業者で対応できる工事はすべて指名競争入札とした上で,村内業者か否かの判断を適当に行うなどの方法を採ることにより,し意的運用が可能となるものであって,公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律の定める公表義務に反し,同法及び地方自治法の趣旨にも反するものといわざるを得ない。
⑤一方,乙は,平成6年の代表者等の転居後も含めて長年にわたり村内業者として指名及び受注の実績があり,同年以降も,甲 村から受注した工事において施工上の支障を生じさせたこともうかがわれず,地元企業としての性格を引き続き有していたともいえる。また,村内業者と村外業者の客観的で具体的な判断基準も明らかではない状況の下では,乙について,村内業者か村外業者かの判定もなお微妙であったということができるし,仮に形式的には村外業者に当たるとしても,工事内容その他の条件いかんによっては,なお村内業者と同様に扱って指名をすることが合理的であった工事もあり得たものと考えられる。
⑥このような乙につき,上記のような法令の趣旨に反する運用基準の下で,主たる営業所が村内にないなどの事情から形式的に村外業者に当たると判断し,そのことのみを理由として,他の条件いかんにかかわらず,およそ一切の工事につき平成12年度以降全く乙を指名せず指名競争入札に参加させない措置を採ったとすれば,それは,考慮すべき事項を十分考慮することなく,一つの考慮要素にとどまる村外業者であることのみを重視している点において,極めて不合理であり,社会通念上著しく妥当性を欠くものといわざるを得ない。
⑦原判決のうち同年度以降の指名回避を理由とする損害賠償請求に関する部分は破棄を免れない。
と判示しました。
この判決は,公共工事は一般競争入札が原則的契約方法であること,村外に出た業者を,合理的理由なく村外会社だという理由で指名の対象から外すのは,違法だと判示したのです。